持続可能な働き方、働きがいやジェンダー平等が実現されている職場を求める人が増えています。こういった職場環境の整備は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも含まれます。そして企業側にはジェンダー平等経営や職場多様性(ダイバーシティ)を経営に取り入れることが求められています。しかし、闇雲に「多様性を進めなければ!」とだけ思っていても、うまくいかなかったり、逆効果になってしまったりすることも……それはなぜ? どんな人にも働きやすい職場づくりとは? 女性を増やすだけではダメなの? 経営学者の入山章栄さんが、最新の理論に基づいて回答します。

日経xwoman編集部(以下、――) 10年ほど前から、多様性を意味する言葉「ダイバーシティ」を日本でも耳にするようになりました。女性や外国人などを積極的に雇用し、職場の活性化や企業価値を高めるとされる「ダイバーシティ経営」は、10年前と比べるとどの程度進んでいるのでしょうか?

入山章栄(いりやま・あきえ) 早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授  慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.を取得。同年から米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。13年に早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。19年から現職。近著に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)。
入山章栄(いりやま・あきえ) 早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授  慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.を取得。同年から米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。13年に早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。19年から現職。近著に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)。

入山章栄さん(以下、入山) 結論から言うと、残念ながら日本では十分には進んでいません。もちろんカルビーや資生堂、ロート製薬など、積極的にダイバーシティ経営に乗り出し、女性の管理職が増えている企業もあります。しかし、全体的に見ると、政府目標である「女性管理職30%程度」をクリアした企業は10%もありません。

 まれに社外取締役のような外部企業から入る役員クラスの女性はいますが、役員や部長クラスに社内昇進する女性はまだまだ少ない。その前段階の管理職を多く育てることが不可欠になりますが、今でもダイバーシティをテーマに話してほしいという企業からの講演依頼は続き、一貫して同じお話をしていることから、あまり進んでいないことが肌感覚でも分かります。

―― なぜ日本企業の職場多様性は進まないのでしょうか。

入山 最も大きな理由は、「何のためにやるか」がきちんと「腹落ち」できていないことだと、私は思います。以前、ある企業のダイバーシティ推進室長に「何のために、ダイバーシティを進めるのですか?」と質問したら、「分かりません」と回答されたことがあり驚きました(苦笑)。でもこれが、多くの企業の実情だと思います。

 世の中の流れというだけで、「進めたほうがいいよね」と何となく思っている人がほとんどなのです。企業全体がそのような風潮で、多様性の本当のメリットを把握していないから本気で取り組めず、いつまでたっても進まないのだと思います。 SDGsについても似たような状況があって、「投資家がうるさいからSDGsをしなければいけない」程度の理解になってしまう。