『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)の著者・薄井シンシアさん。この本をつくってから、シンシアさんのところには、全国からメッセージが届いたといいます。「WOMAN EXPO 2021 winter」で開催したセミナーの再録をお届けします。

 17年間の専業主婦生活の後、47歳で「食堂のおばちゃん」として再就職した薄井シンシアさん。外資系ホテルの営業開発担当副支配人、大手外資系企業、大手企業のシニアマネージャーと華麗なる転職を遂げるも、東京2020オリンピック・パラリンピックの延期で失業して、うつ状態に。それでもスーパーのレジ打ちをしながらキャリアを模索し、2021年に62歳で「LOF Hotel Management」日本法人の社長に就任しました。

 日経xwomanでは、シンシアさんを招いたセミナーを2021年に開催し、500人の枠が満席になるほどの大反響。特に質問が多かった「決断力」をテーマにまとめた著書『人生は、もっと、自分で決めていい』を、同年10月に発売。今回のセミナーは「自分のすべての決断に、一度も後悔したことはない」と言い切るシンシアさんに、日経xwoman編集長の片野温と、『人生は、もっと、自分で決めていい』担当編集者の長野洋子が数々の質問を投げかける形で進行しました。

 本を発売後、全国から手紙やFacebookのメッセージがたくさん届いているというシンシアさん。「本を読んで決断できるようになった、人生が変わったというメッセージが本当にうれしい」と明るい笑顔で話します。

「WOMAN EXPO 2021 winter」のセミナーに登壇した薄井シンシアさん
「WOMAN EXPO 2021 winter」のセミナーに登壇した薄井シンシアさん

 編集長の片野も「読んでみて気持ちがラクになるとともに、目が覚めました。セルフコーチングにおすすめ」とコメント。目が覚めたという言葉を受けて、シンシアさんは「本を読んでしんどいと思う方もいるでしょう。自分と向き合うのだから。私も悔いのない人生を送るために、自分の弱いところを見てきたからしんどかった」と打ち明けます。

自分の強みを見つけるには限界を考えることから

 人生で一番大きな決断を問われて、「専業主婦になるか、ならないか」とシンシアさんは即答。

 子どもがいても仕事をするのが当たり前という教育を受けて育ち、全く考えたことのなかった「専業主婦」を選択したプロセスをこう話します。

 「大きな決断をするときには必ず最悪のことを想像して、それでも自分を許せるかどうかを考えます。娘が生まれて、私が働いていたら娘の送り迎えをできなくなり、もし娘が事故に遭い亡くなったら、私は一生自分を責めてしまう……。だから専業主婦になろうと決断しました」。最悪の状況から考え、自分にとって大切なものを見極めて決断するのがシンシアさん流の思考法なのです。

 「自分の強みを見つけるためにやっていることは?」という質問には、「自分の強みを考える前に、私は常に自分の限界を考えます。何ができないのかを分かった上で、できることに時間をかけるからすごく合理的。実現できる夢しか見ません」とキッパリ。

 「シンシアさんはズバッとおっしゃいますもんね。こういうメンターがいらっしゃると強いな」と片野が思わずつぶやくと、「私はメンターとしてはめちゃめちゃきついと思うんですよ」とシンシアさん。なぜなら、結果を求める相手には、相手のブランディングまで客観的に考えて、生半可なアドバイスはしないから。「それは違うんじゃないの」と痛いところまでつく。「あえて“悪役”を買って出ているんです」