守りたいものがあると自由は減る
「家族のために頑張ろう」と思えるのは強みだと感じる人もいるかもしれません。でも、守らなければならないものの存在自体は、あなたの自由度を奪い、負担を増やすことは事実。私自身も実感があるので、とても分かります。
つまり、弱みはライフステージの変化で増えていってしまうこともあるのです。結婚すればその幸せを守りたくなるし、子どもができればさらにその気持ちは強くなる。守りたいものがあると、それが弱みになることもあります。30代、40代の子育て世代は、その意味では自分のやりたいことを自由にできない、身動きが取れない時期と言えるかもしれません。逆に、独身で若いというのは、それだけで強みになることが多いんですよね。
守りたいものを抱えたそんな時期は、安全な道を進むのも一つの考え方です。
無理をして、限界以上のものを手に入れようとしなくてもいい。なぜなら、今の状況がずっと続くわけではないからです。今の弱みを抱えた状況から解放されるときも来るでしょう。
実際、60代の私は、守るべきものがなくなり、自分の好きなように生きています。誰も私に期待していないし、頼ってもこない、自分の始末だけつければいい、だから、とっても自由です。
こんな時期が、いずれやって来るでしょう。子育てや介護など、守りたい人のケアに追われ、今、十分にやりたいことができなくても、やがて、思う存分できるようになる。そんな日を楽しみに、今は、今やるべきことに集中する。弱みを抱えているときはそんな動き方でいい、と私は思います。
何しろ人生は長い。動ける時期が来たらいつでもそこからスタートすればいい。始発に乗り遅れても、特急に乗れなくても、いつか電車を乗り換えればいいのです。いくらでも乗り換えられますから。自分の弱みを自分で把握できてさえいれば、人生が拓けるチャンスを現実的なタイミングで自分の手でつかみ取ることができると思います。
文/平林理恵 写真/鈴木愛子