2015年に軽井沢移住をした櫻井さん夫妻に、移住のリアルを語ってもらう本連載。最終回の今回は、地方移住に関心のある人のために移住のポイントを聞きました。移住に「失敗」したケースなども見てきた二人ならではの、リアルな話を聞いていきます。

1本目 夫婦で軽井沢に移住してみた、決断までの道程と葛藤
2本目 軽井沢、駅近賃貸に住んでみた 後悔の先に見えたもの
3本目 軽井沢 満を持して、土地を探し・家を建て・住んでみた
4本目 軽井沢~東京 新幹線通勤のリアル 職住近接からの変化
5本目 コロナ下で失業 収入源多角化のありがたみ知る
6本目 軽井沢へ移り住んで「増えた」「減った」支出は
7本目 軽井沢移住者に聞いた 移住のための3ステップ ←今回はココ

日経xwoman(以下、――) これまで、櫻井さん夫妻の移住体験について教えてもらいました。今回は移住に興味のある人に向けて、アドバイスを聞いてみたいと思います。まず、移住を思い立ったらどのように進めていくのがいいのかを教えてください。

櫻井ユウコ(以下、ユウコ) 仕事や学校のことなどは個々人で大きく変わってくるので、多くの人に共通して当てはまると考えられるポイントで話をしますね。移住を検討する段階は、「情報収集」「下見旅行」「トライアル移住」の3ステップで進めるといいと思います。情報収集は、多くの方はインターネットで完結してしまいがちなのですが、できれば実際にその土地へ移住した人から話を聞けるといいですね。

「下見旅行は観光旅行ではなく生活者目線で回ることが大切」(写真はイメージ)
「下見旅行は観光旅行ではなく生活者目線で回ることが大切」(写真はイメージ)

 その次は下見旅行です。ここで大事なのが、観光旅行ではなく生活者目線で回ることです。というのも、観光というのはその土地の魅力的な部分だけを切り取ったパッケージであり、実際に住むとさまざまな現実と向き合いながら生活することになるからです。スーパーはどこにどんな規模の店があるか、病院や役場など、生活に必要な機能はどう配置されているかなど「ここに住んだらどんな暮らしになるか」をイメージしながら回るといいです。

櫻井泰斗(以下、泰斗) 私は新幹線通勤を考えていたので、通勤時間と同じ時刻に乗って往復してみるなど、移住後の生活を想定していろいろ確認をしていました。自転車はどこに停めればいいのか、駅の売店は何時から開いているのかなど、多くの気づきがありました。

 また、旅行は一回だけではなく、異なる季節に何度か訪れることを強く勧めます。最低限、夏と冬の2回は見て、生活がどう変わるかを確認してください。軽井沢でいえば、緑鮮やかな夏に比べて、冬は白一色。寂しい印象になりますし、出歩かないので運動不足にもなります。メンタル面も含めて、気候による影響の大きさは人それぞれ違うので、体感してもらうのが一番です。

 もう一つ、災害に対する強さも確認すべき点です。ハザードマップを見るのはもちろんですが、どのエリアで過去にどういう災害があったのかを知ることが大切です。

ユウコ 残念なことですが、土地に愛着を持ちながら暮らしていると、「その開発はむちゃなのでは」と思う場面を近所で目にするんです。地盤が脆弱なエリアだったり、土砂崩れや倒木などのリスクがあったりするような土地です。でも整地してしまうと、見た目はキレイなので、土地勘がなく下見に来た人には、そこがもともと危ない場所だったと分からないですよね。これから自然災害はもっと増えるでしょうし、田舎は都市ほどインフラ整備がされていない。一見、人が暮らしていけそうと思える場所でも、その全部が全部、都市部みたいに強固につくられているわけではないんです。私は役所や地域の図書館で土地の歴史を調べるなど、過去にどのような用途で使われてきた土地なのかを確認していました。

―― 情報収集もバッチリ、下見旅行で雰囲気を知ってリスクも確認できたら、いよいよ移住でしょうか。