ベンチャーやスタートアップ企業は資金調達をする手段のひとつとして、ベンチャーキャピタル(VC)から出資を検討することがあります。しかし、出資後の起業家とベンチャーキャピタルの関わり合いは意外と知られていません。この連載はその関係性にフォーカスした企画です。今回登場するのは、ブライダル事業を展開するタイアン(東京・新宿)代表の村田磨理子さんとヤザワベンチャーズ(東京・渋谷)代表の矢澤麻里子さん。第5回にわたった本連載も、今回が最終回です。
・結婚式を挙げたときにウェブ席次表とウェブ招待状を開発し、周囲から評価を受ける
・ブライダル業界の課題に直面し、この事業での起業を決意する
・ユーザーのニーズが分からず、早々にサービスの一つを終了させてしまう
・ビジネスマッチングサービスでヤザワベンチャーズの矢澤さんと出会い、出資を受ける
スタートアップに転職し、「起業」が身近に
―― 2020年6月に起業した背景を教えてください。
村田磨理子さん(以下、村田) 起業するつもりはもともとなかったんです。新しいサービスをつくることに興味はありましたが、その場合はフリーランスで働くのだろうと思っていました。起業家になるには、世界を変えるくらい大きくて明確なビジョンがなくてはダメだと思っていたんです。
しかし、大企業からスタートアップへ転職したとき、起業家と交流することが増え、「起業」を身近に感じることが増えました。その中で、起業したいという気持ちが大きくなり「私も挑戦してみたい」と思うようになりました。
―― なぜブライダル事業で起業しようと思ったのでしょうか。
村田 きっかけは2つあります。1つは自分の結婚式でウェブ席次表とウェブ招待状をつくってみたこと。パートナーがエンジニアで、私も前職でエンジニア向け育成サービスのカスタマーサクセスや営業を担当しエンジニアリングの知見があったため、試しに開発してみたんです。そうしたら参加者から好評で、結婚式場側からも「サービスについて詳しく話を聞きたい」と言われ、ニーズがあると感じました。
もう一つは、開発したサービスについてブライダル業界で働く人にヒアリングをする中で「この業界は仕事に情熱を持っている人は多いけれど、労働時間が長いわりに収入が見合っていない」という状況に気づき、改善したいと思ったからです。特に、衣装決めや各種スケジューリングなど準備段階から担当するウエディングプランナーは、休みが不定期な場合が多く、式の当日も新郎新婦が帰るまで式場に残る必要があるため帰宅が遅くなります。
この業界が抱えている変革のない利益構造やアナログ管理が起因となる業務負担などの課題をテクノロジーの力でDX(デジタル・トランスフォーメーション)化すれば、もっと働きやすくなるのではと思い、ウェブ招待状・席次表サービスや結婚式場の業務効率化・売り上げサポートを行うCRMサービス「Oiwaii(オイワイー)」の提供を開始しました。
Oiwaiiは「日程調整している間に連絡が取れなくなった」「新郎新婦のニーズに合わせた事前案内ができていない」「予約はあるのに、実際の来館率が低い」といった課題を抱えているブライダル事業者に向けて、顧客管理機能や来館率・成約率の数値化、メールを自動送信などを提供しています。