この連載では、未来を担う若手起業家とベンチャーキャピタルの関係性にフォーカスします。第1回に登場するのは、大学在学中に起業し、士業、管理部門のキャリア支援事業を展開するヒュープロ(東京・渋谷)代表の山本玲奈さんと、サイバーエージェント(東京・渋谷)のスタートアップ投資、通称「藤田ファンド」の出資担当者である坡山(はやま)里帆さん。坡山さんと山本さんは学生時代からの友人だといいます。藤田ファンドがヒュープロに出資を決めた背景や、事業成長に向けた伴走エピソードについて対談形式で話を聞きました。

ヒュープロ代表 山本玲奈さん(左)、サイバーエージェント 「藤田ファンド」出資担当の坡山里帆さん(右)
ヒュープロ代表 山本玲奈さん(左)、サイバーエージェント 「藤田ファンド」出資担当の坡山里帆さん(右)
「ヒュープロ代表取締役 山本玲奈さん起業ヒストリー」
・弁護士を目指していたが、ビジネスコンテストをきっかけに経営者の道へ
・「若手起業家だから」と相手にされないことも
・立ち上げたサービスがうまくいかず事業転換を繰り返す
・サイバーエージェントの藤田晋さんが登壇する講演会に足しげく通う
・サイバーエージェントからの出資が決まる

ビジネスコンテストを機に起業家の道へ

―― まずは、山本さんが起業した背景を教えてください。

山本玲奈さん(以下、山本) 会社を立ち上げたのは大学在学中の2015年です。もともと学生起業を志していたのではなく、大学3年生までは弁護士を目指していて、ロースクールで司法試験の受験勉強をしていました。

 でも予備校に通うためにはいろいろお金が必要で。その資金を稼ぐためにいろいろなビジネスコンテストに出場していたことが、起業のきっかけになりました。ビジネスコンテストを通じてある上場企業の子会社立ち上げを経験し、会社経営の楽しさを知ったんです

―― 現在の事業に至るまで、何度か事業転換をしているんですよね。現在はどのような事業を手掛けているのでしょうか。

山本 2019年からは士業・管理部門専門の転職サイト「最速転職 HUPRO(ヒュープロ)」を運営しています。弁護士を目指しているときから、士業業界がIT化の波に乗り遅れていることに課題を感じていました。私自身、士業に関する情報収集にかなり苦労しました。

 それに士業や管理部門に関わる人は、とにかく多忙なんです。転職エージェントに登録しても、「日ごろの業務に追われて日程調整さえできない」という声がありました。

 忙しく働く士業や管理部門に関わる人のための「スムーズで情報格差のない転職サイトをつくりたい」と思い、最速転職 HUPROを立ち上げました。

 ただ、起業当初はお金を稼ぐために営業代行の仕事をしていました。1年半ほどたちキャッシュフローがよくなったとき、弁護士事務所でアルバイトできるサービスを立ち上げました。しかし、就職経験がない中で初めて事業を始めたということもあり、不慣れなことばかりで……。また、クライアントのニーズをはっきり把握しないまま始めてしまったので、なかなかうまくいきませんでした。

 当時はまだ20代前半で、社会人経験がありませんでした。かつ女性ということも相まって未熟だと判断され、お客さんにもほかの経営者にも、イチ経営者として扱ってもらえませんでした。「小さなビジネスを続けるくらいなら、無理せず事業売却しちゃえば?」と言われたことも。

 でも、それを理由にビジネスを諦めたくはなかったので、自らクライアントのもとへ足を運んでヒアリングしたり、自分の体験からヒントを得たりして何回か事業転換した後に、現在の事業を展開しています。