意外と知らない起業家とベンチャーキャピタル(VC)の関係性。両者は出資後、ビジネスをする上でどのように関わり合っているのでしょうか。第2回に登場するのは、中低所得者向けの転職相談サービスを提供するCompass(神戸市)代表の大津愛さんと、創業直後(シードおよびアーリーステージ)の起業家を支援するANOBAKA(東京・渋谷)代表の長野泰和さんです。地方のスタートアップ企業と東京のベンチャーキャピタルの出合いとは?

Compass代表の大津愛さん(左)と、ANOBAKA代表の長野泰和さん(右)(提供/ANOBAKA)
Compass代表の大津愛さん(左)と、ANOBAKA代表の長野泰和さん(右)(提供/ANOBAKA)
「Compass代表 大津愛さん起業ヒストリー」
・復職のためにハローワークを訪れたが、「母親が働くのは子どもがかわいそう」と言われる
・キャリアコンサルタントの資格を取得し、キャリアで悩む人の再就職をサポートする
・ワーキングプアをなくすための転職相談サービスを立ち上げるも、銀行やベンチャーキャピタルから「女性向けサービス」と誤解される
・ANOBAKAから出資を受け、事業面、生活面ともに相談できる関係に

ハローワークで「母親が働くのは子どもがかわいそう」と言われ衝撃を受ける

―― 大津さんは、子育て中にCompassを創業されたんですよね。それまでは会社員として働いていたとのことですが、どのような経緯で起業したのでしょうか。

大津愛(以下、大津) 大学卒業後、大手電機メーカーを中心に、10年ほど法人営業をしていました。7年前、出産を機に退職しましたが、すぐに仕事復帰をするつもりでした。しかし、子育てをしながら営業職ができる企業を自力で探すのは限界があったため、ハローワークを利用することにしました。

 そうしたら、窓口でなんと「(母親が働くのは)お子さんがかわいそうですよ」と、言われてしまい……。地方で女性が子育てをしながら働くことに対するハードルの高さを、身に染みて感じました。

 そこで、私のように子育てと仕事の両立が難しい女性や非大卒、非正規雇用などでキャリアに悩んでいる人の相談相手になりたいと思い、キャリアコンサルタントの資格を取得し、就職支援を手掛けるNPO法人で働くようになりました。NPOには引きこもりやニートの他、ワーキングプアと呼ばれる中低所得者が多く相談に訪れます。一般的に、「こういう人たちの就職・転職は難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、私が約3年半の間、キャリアコンサルタントとして向き合ってきた人たちの6割以上が就職できました。

 一方、NPOは給与が上がりにくいため離職率が高く、中長期的に優秀なキャリアコンサルタントが育たないことに課題を感じていました。その結果、就職支援に大きな成果が生まれにくいことにも歯がゆさがありました。世の中に就職支援サービスは多くありますが、中低所得者を支援してもマネタイズしにくいため、ターゲットにされにくい。だったら、「自分でサービスをつくろう」と思い、独立して起業しました。2017年から、年収500万円以下の中低所得者向けに、LINEのチャットボットやAI(人工知能)を活用し、企業とマッチングをするサービス「CHOICE!」を提供しています。

―― 大津さんと長野さんはどのように出会ったのでしょうか。

長野泰和さん(以下、長野) 2016年に大阪で開催されたアクセラレータープログラム(大手企業や行政がスタートアップ企業を支援する取り組み)に、起業家のメンターとして参加したことがきっかけです。でも大津さんはすべてのプログラムに参加していたわけではないんですよね。

大津 当時はまだNPOで働いており、かつ育児真っ盛りでした。だから参加できる時間が限られており、長野さんときちんと話せていませんでした。しかし地方にいると、東京のベンチャーキャピタルと出合う機会はほとんどありません。この機を逃すまいと、アクセラレータープログラムの関係者から事前に長野さんを紹介してもらい、イベント後になんとか会う約束を取り付けていました。