ベンチャーやスタートアップ企業は資金調達をする手段の一つとして、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資を検討することも多くあります。しかし、出資後の起業家とベンチャーキャピタルの関係性は意外と知られていません。両者は出資後、ビジネスをする上でどのように関わり合っているのでしょうか。第3回に登場するのは、医療のビッグデータ活用を支援するYuimedi(ユイメディ)(東京・港)代表のグライムス英美里さんと、起業家を支援するインキュベイトファンド(東京・港)代表パートナーの村田祐介さんです。2人が出会った時、グライムスさんは転職活動をしている会社員だったといいます。なぜ、起業しインキュベイトファンドから出資を受けるに至ったのでしょうか。

「Yuimedi代表 グライムス英美里さん起業ヒストリー」
・薬学部を卒業後、治験の管理・研究の道へ進む
・海外で勉強をしたいと思い、スイスのチューリヒ工科大学へ進学する
・第2子を妊娠中にマッキンゼーへ就職。子どもの進学を機に、キャリアを見つめ直す
・転職エージェントに転職相談をしたら「起業家に向いている」と言われ、2児を育てながら起業する
・インキュベイトファンドの村田さんに初期段階から伴走してもらい、出資を受ける

転職活動中に村田さんと出会い、起業を決意

―― 2020年11月に起業されたとのことですが、現在どのような事業を展開しているのでしょうか。

グライムス英美里氏(以下、グライムス) 一言でいうと、世の中に散らばっている医療データをきれいにするソフトウェアを提供する事業です。

 近年、医療の研究において、「医療リアルワールドデータ」という実臨床を反映したビッグデータの活用に注目が集まっています。しかし、データはまとまっておらず、いろいろなところに分散されているため、研究者の必要とするデータの前処理に時間がかかるという課題があります。そこで私たちは、医療リアルワールドデータをクレンジング(標準化)するソフトを開発し、企業や医療機関などの研究機関が必要とするデータセットの作成をサポートしています。

Yuimedi代表のグライムス英美里さん(提供/Yuimedi)
Yuimedi代表のグライムス英美里さん(提供/Yuimedi)

―― 昨今、ビッグデータの活用には期待が高まっていますよね。

グライムス そうですね。クライアントは製薬会社や保険会社、通信会社だけでなく、自治体や国など多岐にわたっており、需要の高さを感じます。でも、当初から医療のビッグデータを活用して起業しようと決めていたわけではないんです。

村田祐介氏(以下、村田) 初めて会った時、グライムスさんはまだ会社員をしていて、転職するか起業するか悩んでいたんですよね。

グライムス 起業するにしても、事業内容は決まっておらず漠然としていました。村田さんに壁打ち(アイデアや考えを話してアドバイスをもらうこと)してもらわなかったら、きっと起業せずに転職の道を選んでいたと思います