自社商品・サービスをSNSや公式サイト等で紹介する際に知っておきたい法律の一つ、薬機法。医薬品や医療機器として登録していない商品が、あたかも体や心の不調を治療できるかのように表現すると薬機法違反となり、場合によっては商品名と社名が公表される。自社商品やサービスを紹介するときに知っておきたい薬機法のポイントについて、薬事法広告研究所の代表、稲留万希子さんに聞いた。
薬や医療機器でない商品・サービスも薬機法の対象に
企業が自社商品の情報を発信する際に留意すべきコンプライアンスの一つに、薬機法(※)がある。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で、医薬品や医療機器、化粧品に対する法律だが、それ以外の商品やサービスが医薬品及び医療機器を思わせるような効果効能を標榜した場合も、薬機法に抵触したことになる。
例えば、自社商品の椅子で「腰痛が楽になった」と顧客から喜びの声が届いたとする。それを自社のSNSで「わが社の椅子で腰痛回復!」と投稿すると、客から実際に届いた声であっても薬機法違反だ。
その椅子が、腰痛に効果がある旨の厚生労働省の認可を得て、医療機器として登録されていれば問題ない。そうでない場合は、雑品(椅子)であるにもかかわらず、医療機器の範囲の効果効能を標榜した未承認医薬品等と見なされ、第66条「虚偽・誇大広告」、第68条「承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止」に違反したことになる。
違反した場合の罰則は、2021年8月1日に施行された改正薬機法により、違反期間の売上額の4.5%の課徴金、上限なしとなっている(売上高5000万円未満は対象外)。
それまでは上限が200万円だったが、違反商品の売上額に対する課徴金額が低すぎる点が問題視され、今回の改正で上限金額が廃止された。
第66条と第68条の措置命令の対象についての文言は、どちらも「何人も」から始まる。メーカーも取次店も小売店も広告代理店もインフルエンサーもアフィリエイターも、広告においてはすべてが対象だ。(課徴金は、製造販売業者、卸売販売業者、販売業者等の許可を受けた者、及び既に市場に出荷されている化粧品や医薬部外品を販売する者が行う取引が対象)
ということは、自社が薬機法を順守していても、取引先や個人で自社商品を販売する人が知らぬ間に薬機法違反で取り締まられ、自社商品名が予期せぬ形でニュースになる可能性もある。
→薬機法違反
→売上額の4.5%の課徴金
→薬機法は企業もインフルエンサーも誰もが対象
これらのリスクヘッジを含め、自社商品やサービスを広告・宣伝する担当者は、薬機法を知っておく必要がある。薬機法の基本の考え方と広告する際の注意点について、薬事法広告研究所の稲留万希子さんに解説してもらった。