日経xwoman(クロスウーマン)と日本経済新聞社が実施した共同調査を基に、2021年版「共働き子育てしやすい街」をランキング。全国160自治体を評価し点数順にした総合編のベスト3自治体は、何が優れていたのでしょうか?

 日本の保育インフラの整備が転換期にあります。待機児童問題が国民的議論になったのが2016年ごろですが、21年4月時点で待機児童ゼロを達成したのは、今回の調査で回答した160自治体のうち78と半数弱。約3分の1(34.4%)が達成していた1年前の20年4月時点と比べると改善はしているものの、半数以上の自治体で未達成です。しかし、ならば各自治体が引き続き認可保育所の整備を急ピッチで進めていく方針かというと、次第に状況は変わりつつあります。

 この調査では以前から各自治体に、今後の認可保育所整備における「一番の課題」を聞いています。5年前の16年は「用地・物件の確保」、17年~20年は「保育士の確保」と答えた自治体が最も多かったのですが、21年は初めて「将来の需要予測の把握が難しい」という回答がトップを占めました。実は今、「今から保育所を整備しても将来の動向が読めない」という懸念が強まっているのです。

子どもの減少に伴い、将来の保育需要を読み切れずに悩む自治体が増えている(写真はイメージ)
子どもの減少に伴い、将来の保育需要を読み切れずに悩む自治体が増えている(写真はイメージ)

 子どもの数が減り続ける中、共働き世帯の比率が上昇することで、保育所の利用数は増加してきました。しかし21年の調査では、認可保育所の0歳児の申請児童数(平均)、利用児童数(同)が、ともに調査開始以来初めて減少に転じたことがデータに表れています(20年以前の調査データがある自治体同士の比較)。一方で全体の定員は増加し、保育需給のミスマッチといえる兆候が見て取れます。大都市圏ですら「一部地域で定員割れの保育園が出始めている」(東京都渋谷区)といった声が上がります。

 一方で大都市圏を中心に、まだ保育所の不足しているエリアは少なくありません。しかしそういったエリアでも、「保育士不足などの確保の難しさも大きな課題だが、需要が見込まれる地域において、適した用地や物件が不足していることが最も根本的な課題。設置について住民の理解を得ることが困難な場合もある」(神奈川県大和市)といったように、一筋縄ではいかない状況を明かす自治体が散見されます。

 子育て世帯の保育所の入りやすさは、自治体によって明暗が分かれている状況といえます。今後の拡充に向けた自治体の努力に期待できる度合いが下がっているとすれば、「既に保育所に入りやすい状況を実現できている自治体かどうか」の重要度が増しているといえそうです。

 保育所は入れさえすればいいわけではなく、そこで提供されている「保育の質」は重要な要素です。今回回答した自治体も質の確保に取り組んでおり、「保育や保育所運営についての専門知識を持ち、保育現場への巡回指導を行う指導員がいる」のは60.6%。「公開保育や、保育所同士が連携した合同研修、カンファレンスなど、保育の質向上のノウハウを、園を超えて共有する仕組みがある」と回答した自治体も60.6%に上りました。

 一方で、保育の質を担保するための、自治体独自のガイドラインを整備している自治体は31.9%と少なく、幼保小連携を念頭においた就学前教育の研究・支援拠点を設ける自治体も19.4%にとどまるなど、取り組みの内容は自治体によって差がありました。こうした点では大都市圏の自治体が先行しており、保育所の入りやすさで勝る地方都市とは傾向が分かれていました。

 保育所以外で子育て世帯を支援する体制も、以前より整いつつあります。例えば、フィンランドで「ネウボラ」と呼ばれる、妊娠から子育てまでの切れ目ない支援を、7割以上の自治体が何らかの形で導入していると回答しました。同じく7割以上が、スマートフォンアプリやLINEを通じた子育て情報の提供や育児相談の受け付けを実施。新型コロナウイルス禍で懸念が強まっている、就学前の子どもがいる親の孤立を防ぐ取り組みや、親のメンタルサポートを実施している自治体も7割以上に達しています。

 このように本調査では、多数の切り口から、各自治体の子育て環境について採点し、ランキングを作成しました。ランキングに入った具体的な自治体名は、バックナンバー記事をご確認ください。

■上位20自治体の紹介記事
 共働き子育てしやすい街2021 総合編ベスト20
■21位~ベスト50に入った自治体の紹介記事
 総合編ベスト50発表!共働き子育てしやすい街2021

 以降、総合編ランキングで1位の松戸市、2位の宇都宮市、同点で3位となった浦安市、富山市の詳細について解説します。