この連載では、女性のエンパワーメントと経済参画促進のための民間セクターアライアンス「G20 EMPOWER」の日本共同代表であるアキレス美知子さんと塚原月子さんに、ダイバーシティ経営への取り組み方を伝授してもらいます。今回は「G20 EMPOWERベストプラクティス・プレイブック2021 」で紹介された23カ国167例の中から、D&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)を表層的な目標設定に終わらせず、真の改革実現に向けて取り組む企業を紹介します。
D&Iをゼロスタートさせるならトライアンドエラーで進めていい
塚原月子さん(以下、塚原) 「『D&Iは経営戦略の一部』と心得たKPIが成果につながる」では、G20 EMPOWERが調査した23カ国167例のベストプラクティスで得られた「女性が活躍する組織をつくるために必要な6つの示唆」のうち「女性およびすべてのステークホルダーとの対話」「既存の取り組みの再定義とアップデート」の成果を出している企業の事例を紹介しました。
2.ソフトとハードの組み合わせ
3.女性およびすべてのステークホルダー(利害関係者)との対話
4.既存の取り組みの再定義とアップデート
5.着実な測定
6.成果を得るまで粘り強く継続
塚原 今回は、「5.着実な測定」「6. 成果を得るまで粘り強く継続」を実践している企業の事例を紹介します。
企業のD&Iに対する意識は、女性活躍推進法の制定もあり高まっています。一方、D&Iの推進が経営力の向上につながることを理解しないまま、形式的に目標設定をしている企業は少なくありません。形式的な目標設定は、ときに責任者が達成しやすい数値となっており、本質を表わしていないにもかかわらず、その数値を達成した時点で最終的な成果とみなしてしまったりするなど、D&I推進の意味合い自体を中途半端なものにしてしまいます。
アキレス美知子さん(以下、アキレス) 例えば、全管理職のうち女性比率が3%から5%に上がっただけでは十分とはいえません。少なくとも、30%程度を目標にしてほしいところです。
現状の女性管理職比率が数パーセントの企業にとって、30%などという目標水準はハードルが高く非現実的に感じるかもしれません。D&Iの取り組みは多くの企業がゼロからのスタートですが、最初から達成しやすい目標を設定するより、目標は高く掲げながら順を追い、トライアンドエラーを繰り返しながら進めていけばいいと思います。G20 EMPOWERのベストプラクティスで紹介した複数の企業も、KPI(重要業績評価指標)に対する進捗と改善を粘り強く繰り返し、少しずつ成果を出しています。
着実な測定をし、粘り強く継続して成果につながった企業の実例を、これから紹介します。