女性のエンパワーメントと経済参画促進のための民間セクターアライアンス「G20 EMPOWER」の共同代表であるアキレス美知子さんと塚原月子さんに、ダイバーシティ経営への取り組み方を伝授してもらう連載の最終回。今回は「G20 EMPOWERベストプラクティス・プレイブック」に掲載された成功のポイントと、女性活躍推進を目的に作成したジェンダーレンズ・チェックリストを紹介します。
女性活躍推進を成功させるためのポイントとは
アキレス美知子さん(以下、アキレス) 連載で紹介してきた「G20 EMPOWER」ベストプラクティスから得た6つの示唆を実践している企業をさらに分析していくと、成果を生み出すには3つのポイントがあります。
2.ソフトとハードの組み合わせ
3.女性およびすべてのステークホルダー(利害関係者)との対話
4.既存の取り組みの再定義とアップデート
5.着実な測定
6.成果を得るまで粘り強く継続
アキレス 1つは、女性活躍推進に関する自社の課題を把握し、解決するためのKPI(重要業績評価指標)を具体的に設定している点。2つ目は、女性活躍推進およびD&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)に関する人事評価を経営層や管理職にも組み込んでいる点。3つ目は、D&Iの課題はさまざまな要因が絡み合って発生していることを把握し、ステップ・バイ・ステップで解決するのではなく、複数の課題に同時進行で取り組んでいる点です。
さらに、ビジネスと同様に長期的な計画を立てて結果が出るまで粘り強く分析し、改善を続けることも大切です。例えば、指導的立場にある女性の比率が全体の3%から6%に上がったからと安心するのではなく、政府が掲げる30%目標を意識して、継続してほしいのです。多くの企業にとって30%達成までは長い道のりです。だからこそ、中長期的な目標と計画を立て、しっかりと職場に根付かせながら進めることが成功のポイントになります。
そのためには、率直な対話が必要です。トップダウンで「男女均等にしろ」と指示するのではなく、データやチェックリストを使って「なぜジェンダーギャップが埋まらないのか」について、社内の様々な考えを聞き、社外の知見からも学ぶことが解決の糸口になるでしょう。
塚原月子さん(以下、塚原) 自社の「ありたい姿」を明確にし「現在の姿」を数値化すると、具体的に進めやすくなります。さらに、そこには経営のコミットメントが必要です。皆さんの通常業務での売上や財務状況の管理と仕組みは同じです。
アキレス 日本では人的資本経営(人材を資本ととらえ価値を引き出す)が注目されています。人が財産という考え方は日本人に受け入れられやすいと思います。ここに女性活躍、ジェンダーギャップ解消の視点を入れて、経営戦略として推進していくことが求められますし、そうでなければ改革できません。