この連載では、女性のエンパワーメントと経済参画促進のための民間セクターアライアンス「G20 EMPOWER」の共同代表であるアキレス美知子さんと塚原月子さんに世界の先行事例を伝授してもらいます。第1回は、2021年11月16日に開催された、日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアムのセッションの模様をお届けします。「G20から見る、世界最先端の潮流、グローバル企業事例を学ぶ~23カ国、167のベストプラクティス分析~」を基に、2人が語った日本と世界のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)最新情報を、2回に分けて紹介します。

(上)世界167事例を取り入れて自社の女性活躍推進を加速 ←今回はココ
(下)男女平等の視点「ジェンダーレンズ」21社の実態調査

講師・G20 EMPOWER日本共同代表

アキレス美知子(あきれす・みちこ) SAPジャパン 人事戦略特別顧問
アキレス美知子(あきれす・みちこ) SAPジャパン 人事戦略特別顧問
上智大学比較文化学部経営学科卒業。米フィールディング大学院組織マネジメント修士課程修了。シティバンク銀行、モルガンスタンレー証券、メリルリンチ証券などで人事・人材開発を歴任後、あおぞら銀行常務執行役員、資生堂執行役員を経て、2015年からSAPジャパン常務執行役員人事本部長、19年から現職。米Diversity Global誌「17年グローバルダイバーシティにおいて最も影響力のある10人の女性」に選出。横浜市参与、三井住友信託銀行取締役、内閣府男女共同参画推進連携会議議長も務める
塚原月子(つかはら・つきこ) カレイディスト 代表取締役
塚原月子(つかはら・つきこ) カレイディスト 代表取締役
米ダートマス大学タック経営大学院修士(MBA)、東京大学経済学部卒業。運輸省(現国土交通省)、ボストン・コンサルティング・グループ、カタリスト・ジャパンを経て2018年2月から現職。ダイバーシティ&インクルージョン領域のコンサルティングを行う。19年、G20公式エンゲージメントグループであるW20の日本運営委員会事務局長を務め、20年よりG20 EMPOWERの日本共同代表に。3児の母親として、育児と仕事の両立を図る働き方改革を実践中

G20 EMPOWERは意思決定層・経営層における女性活躍を推進するアライアンス

 G20 EMPOWERは、経済やビジネス分野において主要な役割を担う女性の増加と、エンパワーメント達成のために集まった民間セクターのアライアンス(同盟)です。日本が議長国を務めた2019年6月のG20大阪サミット首脳宣言で発足への歓迎と支持が明記され、20年に本格始動しました。主な活動に、

・民間ビジネスセクターの意思決定層、経営層における女性の活躍を推進する
・G20諸国を中心に、民間企業・団体が政府関係機関と連携する
・G20首脳に対し、活動の進捗報告、提言を行う
・日本は設立メンバーとして、議長国とともに中心的に活動する

 などがあり、人事や男女共同参画分野でグローバルに活躍するアキレス美知子さん、ジェンダーを包摂したグローバルな経済発展を目的に発足したW20の日本運営委員会事務局長を務めた塚原月子さんが、民間代表として指揮をとっています。

G20 EMPOWER の活動体制。意思決定層における女性のエンパワーメント達成のための民間セクターのアライアンスであり、日本国内の企業や政府関係機関、G20諸国に働きかける。EMPOWERは、「Empowerment and Progression of Women's Economic Representation」の頭文字を取ったもの。「経済・ビジネスにおける主要な役割を担う女性の増加とエンパワーメント」を指す(図/G20 EMPOWERの資料を基に編集部作成)
G20 EMPOWER の活動体制。意思決定層における女性のエンパワーメント達成のための民間セクターのアライアンスであり、日本国内の企業や政府関係機関、G20諸国に働きかける。EMPOWERは、「Empowerment and Progression of Women's Economic Representation」の頭文字を取ったもの。「経済・ビジネスにおける主要な役割を担う女性の増加とエンパワーメント」を指す(図/G20 EMPOWERの資料を基に編集部作成)

 G20 EMPOWER では、21年9月に世界23カ国、167例のベストプラクティスを紹介した「G20 EMPOWERベストプラクティス・プレイブック」を公開。プレイブックには、各国から寄せられた事例を「改善に向けた測定」「効率的で持続可能な女性人材育成とパイプラインの強化」「女性がリードする未来」の3領域に分けて分析し、それぞれの取り組みが、取締役会・管理職層・昇進に占める女性比率や男女の給与格差などにどのような影響を与えたか、成果を出したかについて、407ページにわたり記載されています。

世界23カ国、167例のベストプラクティスを紹介した「G20 EMPOWERベストプラクティス・プレイブック」
世界23カ国、167例のベストプラクティスを紹介した「G20 EMPOWERベストプラクティス・プレイブック」

 「G20 EMPOWERベストプラクティス・プレイブック」は、G20 EMPOWER公式サイト及び内閣府男女共同参画局ホームページ から、誰でも無料でダウンロードできます。今回は同プレイブックの読み解き方、自社に置き換えての考え方、企業からの疑問とその回答を、アキレスさんと塚原さんのレクチャーを交えて紹介します。