この連載では、女性のエンパワーメントと経済参画促進のための民間セクターアライアンス「G20 EMPOWER」の共同代表であるアキレス美知子さんと塚原月子さんに、ダイバーシティ経営への取り組み方を伝授してもらいます。今回は、女性活躍推進に関する「思い込み」を自覚することで見えてくる、女性が活躍する組織の作り方についてです。

ダイバーシティ経営を妨げる女性活躍推進に対する思い込み

塚原月子さん(以下、塚原) 意思決定層や経営層における女性活躍を推進する民間セクターアライアンスとして発足した「G20 EMPOWER」には、ダイバーシティ経営に関する事例はもちろん、悩みの声も届きます。その中には、女性活躍推進に関する「思い込み」が多くあります。

女性活躍に関する「思い込み」例
1. 管理職になりたがらない女性は多いし、その人たちにとっては迷惑な改革
2. 管理職の能力がある女性がいない
3. 前年より女性管理職比率は上がったから成果は出ている
4. 育休や時短勤務制度など充実させているから女性活躍できる会社だ
5. 制度は作ったし会社は支援している。あとは個人・女性の意識の問題

塚原 こんな思い込み、ありませんか。しかし、これはほんの一例です。特に1番に関連する「女性は、管理職への登用を打診しても『私なんて……無理です』と言うなど、なりたがらない」という話はよく聞きますが、果たして本当になりたくないのでしょうか。人事担当者や育成にあたる上長は「無理なら仕方ない」とそこで諦めず、なぜ無理だと思うか、どうすれば管理職として働けそうかを一緒に考えているでしょうか。

アキレス美知子さん(以下、アキレス) より責任のあるポジションへの登用を打診したとき、同じ内容でも男性と女性で違う反応になることがあります。男性は「やってみます!」とすぐに受ける傾向にありますが、女性は、責任の重さと昇給額を比較したり、家庭と仕事の両立が可能かを検討したりするなど現実と真面目に向き合い、結果「私にできるかしら」と不安になってしまう傾向があります。この反応に対して人事担当者が「管理職になりたくないのか。良かれと思って言っているのに」と思ってしまうと、そこで女性活躍の推進は止まってしまいます。

塚原 「多くの女性はキャリアアップしたいとは思っていないんじゃないか」という育成担当者の声も聞きますが、私はこう答えています。

 「採用時は、男女関係なくやる気に満ちてキラキラしていましたよね? それが5年たち、10年たって、女性だけがキャリアアップを望まなくなったのなら、それは会社に何か問題があるのでは?」と。

 なぜ女性が管理職になるチャンスを断るのか。根本的な原因を探り、改善していくことが、ダイバーシティ経営を進める重要なポイントです。

女性が管理職への登用を断るのはなぜか。本当の理由にこそ女性活躍組織のヒントがある
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