ジェンダー・ギャップ指数において、つねに上位にランクインする北欧諸国。しかし、女性活躍や男女平等への取り組みについて、今までは「女性」や「若いカップル」の視点から語られることが多かったかもしれません。では、「北欧のおじさん」世代は日々、どのように考え、行動しているのでしょうか。北欧ジャーナリストの鐙麻樹(あぶみ・あさき)さんがリポートする「北欧のおじさんシリーズ2回目」です。
日本では転職エージェントの推薦に女性が少ない
前回の記事「北欧の男性にとって『ジェンダー平等』が当たり前な理由」では救命率を高めるための医療教育ソリューションを提供しているレールダルメディカル(Laerdal Medical)ノルウェー本社の最高人事責任者であるアーネ・セグレム・ラーセンさんに話を聞いた。
ジェンダー平等に関する北欧現地の話を聞くと、「北欧だからできるんでしょ」と、実際に日本で実現するまでの道のりが遠く感じられることはないだろうか?
そこで今回は、レールダルメディカル日本支社で働く代表取締役社長スヴェン・ホーコン・クリステンセンさんに登場してもらおう。日本で暮らしていて感じるカルチャーショック、日本で取り組んでいる対策などを聞いた。

クリステンセンさんは1973年生まれ。ノルウェーと日本を行き来しながら、日本にはもう17年以上住んでいる。2017年11月からレールダルメディカル日本支社の社長として働いており、日本語はペラペラ。35人の社員の多くは日本人だ。
まず、「女性リーダーを増やすためには、リクルート段階でできることがある」とクリステンセンさんは切り出した。
「日本でリクルートエージェンシーとやり取りしていると、どうしても男性候補者が多くなりがちです。私たちからは『女性を選んでください』とは言いません。でも、『いるかどうかをチェックして、探しましたか?』とは聞いています。結果的にいなかったのなら、しょうがない。リクルーターには『我々は多様性を大事にしている』とも伝えます。いろいろな人がいたほうがいいですから。男性ばかりだとアイデアのダイバーシティに限界があるからです」
日本の普通の会社とは違い、レールダルメディカルでは、履歴書に「空白期間」があることは気にしないそうだ。
「女性は育児などで履歴書に空白期間が出ることがあります。でも、わが社では履歴書の空白は気にしません。重要なのは、その人の性格や成長したいという気持ちがあるかどうか。パッションがあれば、スキルは学べるじゃないですか。今まで何をしたかということよりも、パーソナリティーを重視しています。
最近も新しい人材を探しているときに、30人くらいが最終候補に残りました。20人くらいが男性でしたが、最終面接にまで残ったのは女性だけでした。今雇っている人はベテランで経験豊富な50歳以上の女性。彼女はとても賢くて、家族の仲もよく、 仕事も速いんです」