ジェンダーギャップ指数2022年版でも上位を占めた北欧諸国。しかし、女性活躍や男女平等への取り組みについて、今までは「女性」や「若いカップル」の視点から語られることが多かったかもしれませ ん。では、「北欧のおじさん」世代は日々、どのように考え、行動しているのでしょうか。北欧ジャーナリストの鐙麻樹(あぶみ・あさき)さんがノルウェー企業の取り組みや、ノルウェー人男性の考え方に迫る連載記事の3回目です。

たくさんの「無理」を分散させるのは企業の仕事

 前回の「ノルウェー式 家事も仕事も生産的な社員が生まれるワケ」に引き続き、医療教育ソリューションを提供するノルウェー企業のレールダルメディカル(Laerdal Medical)社日本支社の代表取締役社長スヴェン・ホーコン・クリステンセンさんに話を聞いている。

 企業が女性に「リーダーにならないか」と提案しても、女性社員が「子育てや家庭との両立で迷惑をかけるかもしれないから」とためらっていたら、どうするのだろうか。もし、私がクリステンセンさんの部下だったとして、「これから結婚も出産もしたいんです。リーダーにならないかと聞いてくれたけれど、子育てと仕事を両立できず、みんなに迷惑をかけるかもしれない。無理かもしれません」と言ったら、どう返事をするのだろうか。

 クリステンセンさんはにこやかに答えた。

 「まずは『どうして無理だと思いますか』と聞き、その原因を考えます。場合によっては本当に無理なのかもしれません。でも、無理の原因を理解し、分解したら、可能になるのかもしれません。これまでの前例を見て、無理だと思いこんでいる人は多いけれども、それは違います。私たちは『こんなふうにしたら』と対応できます」

 では、もっと具体的に私が「子どもは2人くらいほしいんです。保育園に迎えに行くなど、みんなに迷惑をかけるかもしれない」と言ったとしたら、どうだろう。

 「私たちが鐙さんに合わせれば『迷惑』にはなりません。迷惑というのは、誰かが何かを期待して、それができなかったら感じることですね。最初から『保育園のお迎えがある』と私たちが理解していればいいのです」

 合わせるべきは「個人」ではなく、「企業」ということだろうか。そもそも、ノルウェーでは「迷惑をかける」発想がないのだろうか。

 「真面目な人は真面目です。だから、休んでいるときもスマホで仕事のメールをチェックしてしまう人は多いですね。あるいは誰かに自分の代わりをしてもらうよう、計画しています。でも、日本人のように『他人に迷惑をかける』とは思っていません。『自分には休む権利がある』と、権利を行使しています。

 日本ではまだ休みづらい雰囲気があり、『当たり前に休みを取るロールモデル』がいないので、休むときに申し訳なさを感じてしまうのでしょう。だから僕は誰かが休みを取りたい、自分の用事を優先したいときには『何か会社ができることはありますか』と対話をしたいんです」