人生100年時代、自分の歯をできるだけ長く、元気に保つにはどうすればいいのでしょうか。歯を毎日磨いていれば、それだけで大丈夫なのでしょうか。
 最近では、歯と口の中の状態が全身の健康と密接に関係することが明らかになってきました。本連載では、歯学博士の照山裕子さんに、歯と口のケアについて詳しく教えてもらいます。第1回は、歯のしくみと、歯を失う原因について聞きました。

日々のオーラルケアは不可欠。だが、虫歯や歯周病は気づかぬうちに進んでいる場合も。軽いうちに発見すれば、歯を失うことが防げる。だから痛くなってからではなく、歯の状態を定期的にチェックしよう。セルフケアとプロのチェック、この両輪が重要だ。
日々のオーラルケアは不可欠。だが、虫歯や歯周病は気づかぬうちに進んでいる場合も。軽いうちに発見すれば、歯を失うことが防げる。だから痛くなってからではなく、歯の状態を定期的にチェックしよう。セルフケアとプロのチェック、この両輪が重要だ。

 食べる、飲む、話すなど……「歯や口」は実に多くの重要な機能を持っている。なのに、定期的に体の健康診断を受けても、歯の健診に行く人は少ない。

 最近、歯と口の中の状態が、全身の健康と密接なことが次々と明らかになり、「歯や口」を、できるだけ長く元気に保つことが以前より重要視されるようになってきた。

 歯学博士で、東京医科歯科大学非常勤講師の照山裕子さんは、メディアでオーラルケアの重要性を積極的に伝えている一人。これから何回かにわたって、歯や口の基礎知識から、長く歯を使い続けるためのケアまでを詳しく解説してもらおう。

ケアを知っていればこんなことにならなかった

 歯科医だから「虫歯知らずなのでは」と思いきや、照山さん自身、小さいころは虫歯が頻繁にでき、歯科を受診する機会が多かったという。「そのころの治療は今とは違い、歯を削ったら詰め物をして、悪くなったら抜歯をするという、いわゆる昭和の治療法でした」。そんな経験は、歯科医を目指すきっかけの一つだったという。

 歯学部を卒業後、大学院では「顎顔面補綴(がくがんめんほてつ)」を専攻。ここで、口腔がんの治療と並行して、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)や外傷といった症例の発音機能、嚥下回復にあたった。

 大学に残り、専門分野の研究を続ける予定だったが、重症の患者さんからいわれた「若いころにもっと歯の大切さに気づいていれば、こんなことになっていなかった。ケアの大切さを多くの人に伝えてほしい」という言葉に背中を押され、歯科クリニックで診療をしながら、予防歯科の啓発活動を行うように。これまでインプラントやホワイトニングなど歯科の幅広い分野にも関わっている。