内臓や筋肉を包み込む網目状の結合組織「ファッシア」に着目し、難治性の凝りや痛みの改善に取り組む整形外科医の高平尚伸さん。ファッシアをほぐすことの効果、運動によってコリや痛みを和らげるときにポイントについて、さらに詳しく聞きました。

整形外科医直伝! 首、肩、腰の凝り、股関節痛をリセットする「壁ストレッチ」
「壁」があればコリを一気にほぐせる カギはファッシア【1】
姿勢が整い呼吸もラクに ファッシアを左右斜めに伸ばす【2】
・運動によってコリや痛みを和らげるために大切なこととは【3】←今回はココ

ファッシアの癒着を生理食塩水でゆるめる治療法も

──ファッシアを伸ばしてほぐすストレッチ、ハードですが本当に気持ちがいいです。

高平尚伸さん(以下、敬称略)そうでしょう? これまで、整形外科領域では、「症状のつかまえにくさ」が課題でした。例えば腰痛では、診察やレントゲン、MRI(磁気共鳴撮影法)などで痛みの背景にがんなど重篤な疾患がないかをチェックします。しかし、腰痛の約85%はこれらの検査でも原因が特定できない。すると、痛み止めや神経ブロック療法などの対症療法が行われますが、すっきりとはよくならない場合が多いのです。

──確かに「異常はありません」と言われても「こんなに痛いのに」と思った経験があります。

高平 そんな中、超音波診断装置(エコー)で見ることができるのが「ファッシア」。患部にエコーを当てると、癒着したり引きつれたファッシアが白く見えます。整形外科では、癒着した部分に注射針で生理食塩水などを注入し、癒着をゆるめる「ハイドロリリース」という治療が実際に行われ、慢性腰痛、ぎっくり腰、ひざ痛、五十肩などに効果を示しています。

白く見えるファッシア
白く見えるファッシア
画像提供/高平さん