何となく腰が重だるいという人からぎっくり腰を繰り返す人まで、座りっぱなしの現代人の腰痛の悩みは身近かつ深刻。でも、体幹深部筋を研究する大学教授が薦める簡単なエクササイズで「痛くならない」腰は作れます。今回は腰痛の2大原因を詳しく解説。さらに“腹横筋”を使うことの大切さをお伝えします。

“痛くならない腰”を作るエクササイズ 腰痛対策の新常識
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「よっこいしょ」は腰を守る魔法の言葉?骨盤も安定【3】

腰痛の2大原因は筋・筋膜と関節。どちらも守るのは腹横筋

 腰痛が起きる身体的要因は、腰椎を構成する椎骨、椎間板、靭帯などの組織の変質や変形にある。変形は加齢のほか、長時間同じ姿勢をとる、反り腰や猫背といった良くない姿勢など、腰に繰り返し負担がかかることで発生する。

痛みが発症する箇所は大きく分けると筋肉か関節。このうち患者の数が多いのは筋肉。痛みは軽いが外科で診察しても原因が特定できないため、治療できず長引きやすい」(早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡恒治教授)。そんな腰痛を、下記で原因別に分類する。

筋・筋膜が原因の腰痛

 腰痛を訴える多くの人が該当する【脊柱起立筋】が痛むタイプと【筋膜】が痛むタイプ。原因の特定が難しい痛み。数としては少ないが肋骨と腰椎、骨盤をつなぐ腰方形筋が痛む【腰方形筋】が痛むタイプもある。

【脊柱起立筋】が痛むタイプ
【脊柱起立筋】が痛むタイプ
動作の際、脊柱起立筋が背骨を強く引っ張ることで痛みの原因が生じる。背骨の中心から3~4cm外側のウエストラインに痛みを感じる
【筋膜】が痛むタイプ
【筋膜】が痛むタイプ
脊柱起立筋を形成する、最長筋や腸肋筋の筋肉と筋肉の境目の筋膜が炎症を起こし、痛む。この場合、筋膜リリースによって腰痛が治まる

関節が原因の腰痛

 【仙腸関節が原因のタイプ】【椎間板に起きたヘルニア】【脊柱管が狭窄したタイプ】とどれも、長い年月をかけて徐々に変形。外科的治療が必要なケースもある。中には、コラーゲンの問題などにより、遺伝的に椎間板や椎間関節が変形しやすい人もいる。

【仙腸関節が原因のタイプ】
【仙腸関節が原因のタイプ】
仙腸関節からくる痛みは精神的な問題と処理される場合が多い。お尻やそけい部に痛みを感じるが、腹横筋をうまく使えるようになると痛みが軽くなる
【椎間板に起きたヘルニア】
【椎間板に起きたヘルニア】
背骨を形成する椎骨の間にある軟骨、椎間板が変形し後ろに出っ張ると神経に触り痛む。腰椎のうち、仙骨に近い第4、第5腰椎で生じやすい
【脊柱管が狭窄したタイプ】
【脊柱管が狭窄したタイプ】
椎間板と椎間関節が変形し脊柱管にせり出して、神経を圧迫。痛みにより長時間の歩行が難しく間欠性跛行(はこう)になる。腰が反ると圧迫が強くなる

 腰まわりは体の構造上、腰椎以外の支えがない。そのため、立つ、座る、歩く、かがむなどあらゆる動作の際、体幹部の筋肉が働いて姿勢を支えないと、負荷が腰椎にのしかかる。ところが何らかの理由で、体幹の深層筋で腰椎を支える「モーターコントロール」が機能しないと、体幹の浅層筋に負担が集中する。

「例えば、歩行時に深層筋が正しく働かないと腰椎を形成する5つの椎骨が1個1個、バラバラに動き、歩くたびに骨盤がグラグラする。すると、体はパワーのある浅層部の脊柱起立筋などを働かせて無理やり姿勢を安定させる。これを繰り返した結果、浅層の筋肉を使いすぎて痛めてしまう」(金岡教授)