身の回りにおかしいなと感じることがあったり、何か行動を起こしたいと思うことがあったりするとき、自分たちの意見を議会に訴える「陳情」という手段を通して、社会を変えることができます。2018年に「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」を立ち上げ、数多くの陳情により法改正を求める意見書を国会に提出してきた井田奈穂さんに、陳情の具体的な方法や活動の醍醐味(だいごみ)を聞きました。

日経xwoman編集部(以下、――) 井田さんは「陳情」を通して選択的夫婦別姓の法制化に取り組んでいますね。「陳情の方法」について、まず教えてください。

井田奈穂さん(以下、井田) 陳情は国民が公的機関や政党、国会議員や地方議員などに対して、問題について説明し、その改善を要求するものです。「陳情書の書式」とネットで検索すれば、さまざまな雛形(ひながた)が出てきますので、それを参考に要望を書きます。記入した紙を定められた公的機関の窓口、もしくは議員の事務所に届けるだけで陳情の完了です。

陳情書、画像はイメージ
陳情書、画像はイメージ

―― 非常にシンプルですね。これで社会が変わるのですか?

井田 陳情書を公的機関の窓口や国会議員の事務所に郵送しているだけでは難しいでしょうね(笑)。効果的な手法については、私が行っている「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の活動について説明することが理解につながると思います。この活動の最初のステップは、選択的夫婦別姓の法制化について地方議会へ陳情することでした。

 選択的夫婦別姓の法制化には法改正が必要です。つまり、立法府である国会を動かさなければなりません。ならば「国会議員に直接陳情したら」という考えもあるかもしれません。もちろん、国会議員に直接陳情するのは大切です。しかし、全国から陳情を受ける国会議員たちには、なかなか一市民の声は届きにくい。でも、地方議会なら話は別なのです。

―― どういうことでしょうか?

井田 地方議会に陳情することで、地方議会から国に「意見書」を提出してもらえるからです。地方議会は議決に基づいて、議会としての意見や希望を意見書の形で国会や関係行政庁に提出できます(地方自治法第99条の規定)。議会によって違いますが、地方議会の意見書は全会一致、または多数決で可決されます。

 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」も始まりは、東京都中野区の区議会への陳情でした。区議会に陳情を行い、審議で賛成多数を得て、議会から国に意見書を出してもらいました。意見書を出してもらうことによって「この問題の改善を求める有権者の声をうちの議会として後押しします」と国に対してメッセージを送ることができました。

―― 地方議会への陳情から意見書につなげるというのが、法改正への一つの道なのですね。地方議会への陳情ってどうすればいいのでしょうか? 地方議会の窓口に陳情書を送るだけで、意見書につながるものですか?