川久保皆実さん(36)は2020年10月、茨城県つくば市議会議員選挙に出馬・当選し、つくば市の市議会議員になりました。東京大学大学院を卒業後はITベンチャー企業に勤務しながら、司法試験に挑戦し合格。弁護士としても活躍する中、なぜそれまで無縁だった政治の世界に飛び込んだのでしょうか。上編では出馬を決めた理由や既存のやり方とは違う方法で行った選挙活動について聞きました。

【上】川久保皆実 保育園のモヤモヤきっかけに出馬へ  ←今回はココ
【下】つくば市議「生きている間に仕組みつくる」が原動力

日経xwoman(以下、――) 川久保さんは2020年10月につくば市の市議会議員選挙で当選し、現在は仕事と育児を両立しながら、議員として活躍しています。出馬までの経緯を教えてください。

川久保皆実さん(以下、川久保) 出馬を考えたきっかけは、つくば市の子育て支援制度が都内に比べて遅れていることに愕然(がくぜん)としたからです。私はつくば市生まれ、つくば市育ちですが、弁護士として働いていた31歳のとき、長男の妊娠を機に職場のあった東京都千代田区に引っ越しました。それからつくば市にUターン移住するまで、ずっと子育ての場は千代田区でした。

 つくば市へのUターンを決めたのは、コロナ下で夫婦とも仕事がすべてテレワークになったからです。生まれ育ったつくば市は大好きな場所でしたし、東京に比べて自然が豊かで、家賃も安くて住みやすい。それで、2020年7月につくば市へ戻りました。

「もし当選して28人の市議会議員の中に入れれば、一市民として声を上げるよりもずっと変えやすくなる」(川久保さん)ことが立候補のきっかけだった
「もし当選して28人の市議会議員の中に入れれば、一市民として声を上げるよりもずっと変えやすくなる」(川久保さん)ことが立候補のきっかけだった

 けれど、つくば市の公立保育園に二人の息子を通わせ始めて、千代田区の保育園に比べて親の負担があまりに違うことに驚いたんです。例えば、お昼寝のお布団。千代田区では、お布団もシーツも保育園側が用意してくれて、親は週に一度、新しいシーツを布団にかけるだけでよかった。でも、つくば市では、入園時に布団一式を親が購入して、それを毎週末持ち帰らなくてはならなかったんです。わが家は子どもが二人いるので、毎週大荷物を持ち帰らなくてはならなくて大変でした。

 それから、保育園への白飯持参も親にとって重い負担でした。当時、つくば市では3歳児クラス以上になると、給食で主食が出なくなるので、親が毎朝ごはんを炊いて、お弁当箱につめて持たせなくてはならなかったんです。保育園で使用したオムツも、千代田区では園側で廃棄してくれていたのに、つくば市では持ち帰りが必要でした。保育料もつくば市の方が高いんです。

 最初からつくば市の保育園に通わせていたら疑問に思わなかったのかもしれません。けれど私は都内の状況を知っていたし、同じ「公立」なのに何でこんなにも違うんだって我慢ができなくなったんです。どうやったら変えられるのだろうと考えていたときに、3カ月後に市議会議員選挙があることを知ったんです。これに出て、もし当選して28人の市議会議員の中に入れれば、一市民として声を上げるよりもずっと変えやすくなる……そう考えたんです。

―― 子育て制度のモヤモヤは誰しも多少なりとも持ってると思うのですが、そこで実際に「議員になろう」という発想につながった点が驚きです。