2022年4月に「女性活躍推進法」と「パワハラ防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)」が大企業だけでなく、中小企業にも適用されます。この法律により、中小企業は環境整備と意識改革に取り組むことが求められます。いったいどのような内容で、企業はどのような取り組みをすればいいのでしょうか。弁護士の向井蘭さんに聞きました。

まずは何から始めればいい?

日経xwoman編集部(以下、――) 今まで、女性活躍推進法とパワハラ防止法の適用は大企業が対象でしたが、22年4月からは対象が中小企業まで拡大します。それぞれどのような法律で、中小企業は今後、どのような対応が必要になるのでしょうか。

向井蘭さん(以下、向井) まず女性活躍推進法は、16年に施行された法律です。働く女性が能力を十分に発揮して個性を生かすことのできる社会を実現するため、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に行動計画の策定・情報公表を義務付けるというものです。16年に施行されたとき、300人以下の事業主に対しては努力義務とされていました。

 それが、4月からは常時雇用する労働者数が101人以上の事業主も、女性活躍推進法の対象となります。つまり、今まで女性活躍推進法により、中小企業の行動計画策定と情報公表は努力義務だったのが、4月からは301人以上の企業と同じように、義務化の対象になります

―― 「行動計画」はどのように取り組めばいいのでしょうか。

向井 以下の4つのステップで策定します。

ステップ1 社内の女性活躍に関する状況を把握し、課題を分析する
ステップ2 ステップ1の内容をふまえて、数値目標や取り組みを行動計画に盛り込み、社内外に公表する
ステップ3 「一般事業主行動計画策定・変更届」を届け出る
ステップ4 取り組みを実施し、効果を測定する

 そもそも「社内の女性活躍をどのように分析すればいいのか」分からない企業も多いと思います。厚生労働省が運営する「女性の活躍・両立支援総合サイト」にある「女性の活躍推進企業データベース」に策定例が書かれているので、こちらを参考にするといいでしょう。「一般事業主行動計画策定・変更届」は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

一般事業主行動計画の策定例 <301人以上/部長の女性割合が低い企業の例>

目標1:部長に占める女性割合を20%以上とする
目標2:社員1人当たりの有給休暇取得率を70%以上とする

目標1の実施時期と取り組み内容例
・20年4月~ 経営トップによる、全社を挙げてのダイバーシティ推進に関するメッセージを発信する
・21年4月~ 課長職以上の女性を対象に、女性の部長がメンターとなって育成を図る
・22年8月~ 女性社員を対象としたキャリアに関するワークショップを開催する(年1回)
・24年4月~ 部長職への昇格を状況を分析し、経営会議での議題とする

(出典:厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」)

 また、一般事業主行動計画の策定・届出に加えて、労働者数が101人以上の事業主にも、女性の活躍に関する情報公表が義務付けられます。

 女性の活躍に関する情報の項目は、採用した労働者や、管理職に占める女性の割合、男女の平均継続勤務年数の差異や男女別の育休取得率などで、1項目以上を公表しなければいけません。こうした情報を公表することは、優秀な人材を採用したり、離職を防いだりなど、企業にとってもメリットになります。

―― 企業が女性活躍推進法に取り組まないと、どのような罰則があるのでしょうか。