定年後、地域の活動で恥ずかしい思い

 いわゆる「仕事一筋」で生きてきた人の話から始めましょう。私がインタビューしたある60代の定年退職後の男性は、地域交流の場での自己紹介で、非常に恥ずかしい思いをした経験を話してくれました。

 定年後に地域のボランティア活動に参加したときのことです。彼は初日、ボランティア仲間たちに自己紹介をしました。その際、「○○企業に勤めて、○○部の部長までやった○○と申します。よろしくお願いいたします」と言ってしまったそうです。しらけた場に「あれ、なんで?」と思ったと言いますが、最初は理由が分からなかったそうです。

 帰宅し、よくよく考えてみれば、彼がどんな会社に勤めていたのかなんて誰も興味がないですし、地域の活動にとって意味もないことに気づいたそうです。「今思い出すと、とても恥ずかしい」と嫌な思い出となってしまいました。

 原因の一つが「視野の狭さ」にあるのでしょう。大学を卒業後、家事・育児を妻に任せ、仕事だけしてきたなら、その人たちにとって「会社」はすべてです。そのため、自己紹介をするにしても、これといった趣味もなく、元いた会社で何をしていたのか、ということくらいしか思いつかない。極端な話に聞こえるかもしれません。ただ、こういう人は意外に多いんですね。

「女性は家庭・男は仕事」という社会は生きづらい

 また、今、現役で働いている男性にとっても「女性は家庭」「男は仕事」という社会は生きづらいはずです。男性がこの考えを維持しながら幸せを得るには、「仕事で勝ち続ける」ことが重要になるためです。仕事で勝ち続ける、つまり、「会社で出世していく」ことが求められるのです。

 でも、一体、どれくらいの人が出世できるのでしょうか。同期の社員が100人いた場合、課長になれるのは何人でしょう。部長は? 役員は? と考えると、勝ち続けていくことの難しさが分かると思います。

 それよりも、家事・育児をこなしながら、仕事もしっかりするという「両立」のスタイルこそが、これからは適しているはずです。仕事がうまくいかないとき、家庭に居場所を求めるのは大いにありでしょう。妻や子どもとのコミュニケーションで一息つけば、仕事にだって張りが出ます。家庭をおろそかにしていたら、仕事でもし「負け」ると、居場所がありませんよね。

 「家事も育児も仕事も」という考えを持つ日本の男性が増えれば、女性が家事・育児に忙殺されることなく、社会で活躍する機会をより多く得られるのではないでしょうか。それが、長い目で見たときの日本のジェンダーギャップ指数の順位向上につながるはずです。

取材・文/飯島圭太郎(日経xwoman編集部)