世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数(男女平等指数)2021年」で日本の順位は156カ国のうち120位。日本の順位そのものが気になるのは確かだが、そもそもジェンダーギャップ指数とはどんな意図で調査されているのか。より深く理解するためにはどう読み取ればよいのか。さらに、経済とジェンダーギャップ指数はどう関連しているのか。最新2021年版の読み解き方も含め、WEF日本代表の江田麻季子さんに聞いた。(聞き手は日経xwoman編集委員・羽生祥子)

「ジェンダーギャップ指数」
 男女格差を見る指数として、「女性の数÷男性の数」の指数で表される。男女が平等なら「1」、女性が少なく格差が大きくなれば「0」に近づく。世界経済フォーラムは「経済活動の参画と機会」「教育」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」の4分野(14項目)で指数を計算している。

 ジェンダーギャップ指数2021年版では、日本は全体で120位(2020年版は121位、以下同様)。経済117位(115位)、教育92位(91位)、健康65位(40位)、政治147位(144位)となり、すべての項目が前回調査時から悪化している。特に政治と経済の分野で順位が低かった。
江田麻季子(えだ・まきこ)さん/世界経済フォーラム日本代表
東京都出身。早稲田大学、米国の大学院を経て、米国でマーケットリサーチ・アナリストとして勤務。帰国後、インテル日本法人へ入社。マーケティング本部長としてブランド戦略などを統括。その後、香港を拠点にアジア太平洋地域のマーケティング活動を指揮し、2013年10月から18年3月まで同社代表取締役社長を務めた。在任中は20年以上にわたる豊かな経験と知識を生かして新市場の創出などに取り組み、グローバル人材の育成にも力を入れた。18年4月、世界経済フォーラム日本代表に就任。

意図的にジェンダー平等を目指さないとギャップはいつまでも埋まらない

―― 最初にジェンダーギャップ指数の基本について教えてください。

江田 世界経済フォーラムが男女格差の指標として「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で指数を調べ、2006年から公表しています。ジェンダーギャップ指数は、男性の数を「1」とした場合、女性の数はどのくらいなのかを表しています。2021年版で1位となったアイスランドで「0.892」ですから、トップの国でも男女格差があるわけですね。そして調査対象の156カ国の指数を並べると、120番目にくるのが日本というわけです。

 先進国では教育、健康の分野ではあまりジェンダーギャップはありません。しかし世界でも日本でも、大きなギャップがあるのは政治の分野です。国会議員の男女比、閣僚の男女比、直近50年間における国家元首の在任年数の男女比にギャップがあります。もう一つが経済の分野です。他の先進国でも政治に次いでギャップが大きく、特に日本では大きな男女差が見られます。

ジェンダーギャップ指数2021の総評をする、WEF日本代表の江田麻季子さん。「意図的にギャップを埋めないと、いつまでたっても男女格差は組織の中で生じます」
ジェンダーギャップ指数2021の総評をする、WEF日本代表の江田麻季子さん。「意図的にギャップを埋めないと、いつまでたっても男女格差は組織の中で生じます」

日本に非正規雇用の女性が多いことが、賃金ギャップの原因

江田 経済協力開発機構(OECD)の調査で、日本の女性就業率は平均より高いと言われることがありますが、それは15~64歳の就労しているすべての女性の人数です。日本の場合、就労女性の中で非正規雇用が多く、役員や管理職が少ないことから、大きな賃金ギャップがあります。このところ企業の間で女性の役員や管理職を増やそうという動きが見られますが、他の国に比べてその改善スピードはまだまだ遅いです。

―― 日本では正社員だけを見て「うちの会社の中に男女賃金差はありません」となりがちですね。しかし賃金ギャップは、同じ企業内の正社員同士だけの話ではないですよね?

江田 当然、非正規雇用も含めて考えなければいけません。女性は非正規雇用が多いので大きなギャップがあります。それに正社員同士でも、やはり賃金の男女差があることが少なくありません。

 先進的な企業であっても意図的にジェンダー平等を目指さないと、どうしてもギャップが生じてしまいます。なぜなら、男性のほうが過去の経験が幅広く、それをベースに役職や賃金の交渉をアグレッシブに交渉したりします。しかし女性はそうでもないからです。

―― 今回のジェンダーギャップ調査でも高いスコアを出した欧米では、意図的に取り組んでいるのでしょうか?

江田 アイスランドでは2018年に雇用の男女差別を禁止する法律が改正されました。企業や公的機関に関わらず、同じ内容の仕事であれば男女で同一賃金を支払っているという証明書を政府に提出しなければなりません。また米国のセールスフォース・ドットコムは2016年に多額の投資をして男女の賃金格差を解消したことで知られています。

「実力主義なので、男女関係ない」は、アンフェアでおかしな話

―― いつも同じ議論を繰り返し、ジェンダー平等の理解が進まない論調に、「実力主義なのだから男性だ女性だと言うほうがおかしい」というものがあります。実は男性より女性にそういった意見が多いように感じます。江田さんはこの点についてどうお考えですか?

江田 何をもって実力とみなすか。ここをしっかりと話し合わなければいけません。そして機会を与えられない女性は同じ土俵にすら上がれないわけですから、そこで実力と言われてもアンフェアではないでしょうか。「男性中心の組織の中で、機会も少ないのに自然に格差がなくなるなんて、ちょっとおかしな話なんじゃないですか?」という気づきがあってもいいと思います。