私たちは「緩いAI」

 構造的性差別は社会のあちこちに存在しています。

 皆さんにも、こんな経験はないでしょうか。例えば、隣の家に越してきた家族があいさつに来たとします。そんなとき、何となく「夫の転勤で引っ越してきたのかな?」「テスラ(完全自動運転に対応したハードウエアを搭載した車)に乗っているんだ。夫の仕事はIT系かな」などと何気なく思うことがあるかもしれません。

 本当は、その家族は妻の転勤で引っ越してきたかもしれないですし、テスラは妻が買った車かもしれません。上記はある種の悪気ない「偏見」に基づいた思考なのですが、私たちは過去のデータの傾向(夫のほうが妻より給与が高い傾向がある、配偶者の転勤についていくのはほとんど女性、など)から学び、その経験値のバイアスに基づいて物事を考えたり、判断したりしてしまう場合があります。そういう意味で、私たちは「緩いAI」だと言えるかもしれません。

 私たちは過去のデータを基に「推測」し、「偏見」を通して社会の物事を認識しているのです。しかし、その中でのいくつかの推測や偏見が、性別や人種によって、特定の人たちを傷つけたり、その人たちからチャンスを奪ったりして、悪循環を生んでいます。私たちはそれを是正していかなくてはいけません。

女性は普段の10倍は自信を持とう!

 日本のジェンダーギャップを解消するために、個々の女性ができることを考えてみました。

 私が一番大事だと思うのは、女性が「自分に自信を持つ」こと。

 「そんなことは自分には無理かも……」と思ってしまうことがあったら、それは過去の経験に基づく暗示である可能性があります。だから私は女性の皆さんには「少なくとも普段の10倍は自信を持ってほしい」と思うのです。

 従来のロールモデルや社会による影響で、女性が抱く「自信」や「夢」はどうしても小さくなりがちです。描く夢が大きければ、その分成長できたり、前に進めたりします。だから、まずは自分に自信を持つことが大事です。

 あとは、制度的な差別にもっと意識を向けて、それについてしっかり発言すること。それにより、自分だけではなく、自分と同世代や、若い世代の女性たちを救える可能性があると思います。

構成/小田舞子(日経xwoman編集部)、写真/窪徳健作