偏ったサクセスストーリーは、むしろバイアスを強化する

 女性の管理職をいかにして増やすかという議論になると、「女性のロールモデルが少ないせいだ」とよくいわれます。しかし、今必要とされているのは、ロールモデルの「数」ではなく「種類」ではないかと思っています。なぜなら、男性軸の価値観に合わせて成功したり昇進したりしてきた、いわゆる「バリキャリ」のサクセスストーリーだけでは、むしろバイアスが強化されることもあるからです。これは「生存者バイアス」によるものです。

 例えば、マイノリティーに属する人が困難を乗り越えて、どうにか成功し、サクセスストーリーとして祭り上げられることがあります。すると、「ほら見ろ。マイノリティーでも頑張れば活躍できるんだ」と、社会や構造の問題ではなく、本人の努力が足りないからだと、バイアスを強化するほうへいってしまう。

 こうした現象は、戦争中、帰還した戦闘機を調べて、コックピット以外に弾痕が集中して当たっていたのでコックピットを補強せずに戦地に送り出したのと同じ過ちを犯しています。コックピットに弾痕が少ない戦闘機は、墜落して帰還できなかった。つまり、むしろそこを手当てすべきなのに、生還した戦闘機だけに目を向けていては、その事実に気づけないんですね。

 活躍している人たちの周りには、見えない多くの脱落者がいます。その声なき声に耳を傾けない限り、犠牲者は増え続けます。アンコンシャス・バイアスを超えるには、男性も女性も、今は見えていない、価値観の死角に対する想像力を持つ必要があると思います。