2021年のジェンダーギャップ指数ランキングで120位と精彩を欠く日本。一方で米国は、前年の53位から30位へ一気に順位を上げた。彼我の差は、なぜここまで広がったのか。日本が取るべき方策はあるか。1996年からニューヨークに在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの寄稿をお届けします。
日本の2021年ジェンダーギャップ指数ランキングを見ると、政治147位(前年144位)、経済117位(前年115位)などと、軒並み順位を落としている。特に政治は、下から数えて10番目。報道では決まって「G7で最下位」という表現が使われるが、もはや「G7」とくくる意味があるのかと疑問を感じる。他の先進国との差が、あまりにも大きいからだ。

神奈川県逗子市出身。1993年渡米、1996年からニューヨーク在住。早稲田大学法学部卒、マサチューセッツ州立大学修士課程修了、ハーバード大学ケネディ・スクール大学院修士課程修了。1996年からニューヨークの文化機関ジャパン・ソサエティーで各種シンポジウム、人物交流プログラムなどを企画運営。その後、地政学リスク分析の米コンサルティング会社 Eurasia Groupで日本営業チームの初代ディレクターを務める。2019年、中東諸国の政治情勢リスク分析を専門とするコンサルティング会社、HSW Japanを設立。複数の企業の日本戦略アドバイザーを務める傍ら、執筆活動も行う。
女性の経済参画意識を推し進めるためには何が必要なのか
2019年、世界経済フォーラム(WEF)のダボス会議で、安倍晋三首相(当時)は「女性の労働参加率が67%に増えた」と胸を張った。ゴールドマン・サックス証券のキャシー松井氏が初めて「ウーマノミクス」に関するリポートを発表した1999年以降、確かに女性の労働参加率は増えた。しかし、増えたのは圧倒的に非正規雇用だ。2019年の総務省「労働力調査」によると、女性の非正規雇用労働者の割合は56%に上る(男性は22.8%)。
非正規雇用が雇用主にとって都合がいいのは、容易に人を雇ったり解雇したりできることだ。当然、雇用関係は不安定なものとなる。実際、コロナ下で失業した女性は多かった。
かたや管理職に占める女性比率では、日本は139位。直近で14.7%と、米国(42.2%)やノルウェー(34.5%)と比べると半分以下で、大きく水をあけられている(Global Gender Gap Report 2021)。
これだけ女性管理職が少ないのは、一生続けられるような仕事を持つ女性が依然ごく一部だということを示している。大卒で実務経験もある多くの女性たちが、パートや派遣に職を求め、働き続けはするものの、意味のあるキャリアを築けずにいるのが現状ではないか。