女性たちの周りにいる男性たちを変えていく
女性だけに「もっとキャリアに欲を持とう」「子どもができても仕事を辞めないで」といくら発破を掛けても、彼女たちの周りにいる男性たちが同時に変わらない限り、実現は難しい。
管理職の女性たちにとっては、経営側にいる年長の男性たちへの「啓蒙活動」もミッションの一つだ。彼らが長く抱いてきた固定観念、「男性社員のほうが優秀」「女性社員はどうせ辞める」などをアップデートしていく必要がある。
夫たちの意識を変えていくことも重要だ。男性が家事や子育てに共に関わる家庭ほど、女性は仕事を続けやすいし、複数の子どもを持つ気にもなりやすいのではないだろうか。であれば、男性の積極的な家事・育児は、少子化の歯止めにもなるはずだ。
政治分野で米国のスコアが急上昇した根底に、女性たちの怒り
最後に、政治参加について一言。WEFが指数計算に使う4つの指標のうち、教育と健康は悪くないのに、政治と経済が下位という国は、実は日本だけではない。米国にも、程度こそ違うが同じ構造がある。
だが、米国の「政治参加」の指標はこの1年で大幅に上がり、総合順位も53位から30位に急上昇した。
米国にとって、過去1年は激動の日々だった。大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の落選、初の女性副大統領誕生、そしてジョー・バイデン政権が指名した閣僚は、史上初めて男女がほぼ同数となり話題になった。2021年1月からの連邦議会では、女性議員数が史上最多となった(現在の女性議員比率は27%)。
実は、今から約30年前、1992年に米国では史上最多の女性議員が当選し「女性の年」と呼ばれた。その背景にあったのが、選挙の直前に最高裁判事に指名されたクラレンス・トーマス氏にセクハラ疑惑が浮上したにもかかわらず、彼が承認されたこと。これに怒った女性たちが、行動を起こしたのだ。
そして1992年の記録を塗り替えたのが、2018年の中間選挙、そして2020年の選挙だ。いずれも、2017年から積もったトランプ政権への怒りが、多くの女性たちを出馬に駆り立てた結果といわれる。
今年、森氏の女性蔑視発言に端を発し、日本の女性たちは今まで例にないくらい怒りの声を上げている。米国と同様に、こうした怒りが原動力となり、来年、日本のジェンダーギャップ指数の数値を引き上げる可能性はある。
文/渡邊裕子