性と生殖の主導権を握るのも女性の権利
さまざまなジェンダーギャップの課題がある中でも、私が改善の必要性を強く感じているのは、「性と生殖に関する健康と権利」です。日本の性教育は遅れていて、女性が生殖に関する主体性を得るための選択肢がとても少ない。必要なものや情報にたどりつく難しさも感じます。
女性が社会進出する上で、人生にとって根本的に大事な「妊娠」という部分を、コントロールすることが難しい。避妊の課題に取り組もうとすると、「そんなにセックスしたいの?」「そんなに遊ぶの?」というふうに見られてしまうことが少なくありません。真面目に自分の人生に向き合おうとしているだけなのに、「そんな社会で本当に女性が活躍できるんですか?」という疑問がわいてきます。
なぜピルという避妊法が生まれたか。歴史をたどってみると必要性が分かります。米国のマーガレット・サンガーという女性が、中絶に悩む多くの女性のために、女性が自らの健康を守る権利と良識にもとづいた家族計画を目的に強く訴えたことから、開発につながったのです。でも、日本では低用量ピルに関して十分な知識を得にくく、利用への心理的経済的なハードルも高い。結果、日本の低用量ピルの普及率がまだ5%にも届かない中で、女性の社会進出と出産を推し進めるのは、女性の権利の視点からもやはり無理があるように思います。産む、産まないの選択も含めて全部が一人の人生にあることなのに、女性一人ひとりが持つ権利が尊重されていないと思うんです。
学校では「自分を大切にしましょう」と教わりますが、そのための手段を大人が用意していません。想定外の妊娠や避妊へのアプローチのハードルは高く課題だらけ。女性を取り巻く問題は置き去りにされ、「トイレで産んだ」「子どもを捨てた」というような悲劇、そして結局女性たちが責められるということが繰り返されてきたと感じます。本来ならもっと行政でできること、やるべきことがあるはずです。女性の視点による意思決定が少ない。
スウェーデンのジェンダー平等への取り組みは、スウェーデンを労働者不足という国の危機から救ってきた歴史があります。一方で私は、人権としての男女平等や性と生殖に関する権利の意識が根付かないまま、少子化や国際的な競争力の低下など国の危機を前に「子どもを産んで」「女性も働いて」と言われる風潮に危機感を抱いています。ジェンダー平等の達成は国益にかなう、かなわないかにかかわらず、純粋に人権の問題として本気で取り組んでほしいです。
取材・文/加藤京子(日経xwoman doors) 写真/福田さん提供