日本では往々にして、サイエンスとテクノロジーが先進的であればイノベーションが起こる、と考えられてきました。もちろん、サイエンスとテクノロジーの卓越性は前提条件ですが、それだけではイノベーションは起こりません。必要なのは、それらを用いて開発されたモノやサービスを受け入れるユーザーが多数いるのかどうか。つまり、消費者が何を求めているのかという視点です。そこで鍵を握るのが、人口の半分を占める女性です。ダイバーシティからの視点で、女性ユーザーが何を求めているかを的確に捉えることができなければ、優れたモノやサービスを開発しても受け入れてもらえず、社会は変わらないのです。

 女性が求めるモノやサービスを提供するためには、そのもととなるサイエンスやテクノロジーに深い知識を有し、斬新なアイデアで開発企画の方向性をリードしていく側に、女性が多く参画しているほうが優位であることは言うまでもありません。日本は、ここが弱いと思います。理系に進む女子が少ないこと、組織の意思決定層に女性が少ないことは、大きな課題です。

大阪大学ではすべての人の個性を尊重することを宣言

 さらに、イノベーションを阻む主要な要因の一つは、どの国でもそうですが、「法規制」です。規制緩和を実現して、新たな市場を開拓できるか。新しい技術を引っ提げて、国際的な場で丁々発止のタフなディスカッションを行い、国際標準規格の枠組みをつくれるか。そのようなイノベーティブな人材を育成するためにも、すべての個性が尊重され、お互いの考えを言い合うことができ、違う角度からのアイデアを伝えることができる環境を整えなくてはなりません

 多様性の向上や働き方改革を推進するには、男性の、特に役員・管理職層の意識改革が非常に重要です。大阪大学ではまず総長の私からその姿勢を示すべく、2020年に私をはじめとする役員全員で「イクボス宣言」と「SOGIアライ宣言」を行い、すべての人の個性を尊重することを宣言しました。また、2021年4月1日時点で本学の理事の女性比率は20%以上、監事を含む役員は女性25%以上、経営協議会の委員は女性30%以上を達成しています。