世界経済フォーラム(WEF)が3月に発表した「ジェンダーギャップ指数(男女平等指数)」で、日本は156カ国中、120位。過去最低だった2020年の121位(153カ国中)とほぼ変わらない。果たして順位を上げる策はあるのか。今回は大阪大学総長の西尾章治郎さんに話を聞いた。西尾さんは30%Club Japanに加入し、内閣府「女性活躍を推進する男性リーダーの会」に賛同、全国ダイバーシティネットワークの総括責任者も務めるなど、多様性の推進に積極的だ。日本の現状を変えるために、組織のトップに求められる姿勢とは。

指導的立場にある人々は強い危機感を持つべきだ

 ジェンダーギャップ指数が120位(G7中、最低)と衝撃的な状況であり、いまだに政治分野や指導的な立場における男女間ギャップの大きさが指摘され続けています。企業であれ、大学であれ、組織のトップとしては、この立ち遅れた状況に強い危機感を持ち、ジェンダー平等や多様性の推進を、率先して本気で進めていかなければなりません。

西尾章治郎(にしお・しょうじろう)さん/大阪大学総長
1975年京都大学工学部卒業、1980年同大学院工学研究科博士後期課程修了(工学博士)。京都大学工学部助手、カナダ・ウォータールー大学客員研究助教授、大阪大学基礎工学部助教授などを経て、92年同工学部教授。その後、大阪大学サイバーメディアセンター長、同大学院情報科学研究科長、同理事・副学長を歴任し、2015年8月に第18代大阪大学総長に就任。日本学術会議会員(情報学委員長)、日本ユネスコ国内委員会委員、文部科学省、総務省等の委員会、審議会等の委員長、座長などの役職を数多く務める。現在、国立大学協会副会長。紫綬褒章、文化功労者顕彰を受ける。

 日本は「性役割分業意識」がとりわけ強いため、経営者層など指導的立場にある人々が連携して、ジェンダー平等や多様性推進の重要性を自ら発信し、意識改革を促し、現状を変えていくことに相当な努力をしなければ、ジェンダーギャップ指数に示された現状を改善することは難しいでしょう。

 なぜ多様性が必要なのか。それは多様性こそが新たな価値創造(イノベーション)の源泉の一つだからです。

「共創」によるイノベーションに必要な二つの「D」

 現代の大学には、社会と向き合い、新たな課題を見つけ、解決をしていくという役割が以前にも増して求められています。ウィズコロナの新時代を切り開く人材の育成や、新たな社会的価値の創出という使命があります。産・官・民と連携し、異なる組織が共通の場を持ち、課題探求や基礎研究の段階から「共創」することにより、イノベーションを起こすことが重要です。

 「共創」によるイノベーションを促進するためには、二つの「D」が必要と考えています。それは「Diversity(多様性)」と「Disruption(創造的革新)」です。ダイバーシティにより、多様な価値観や文化を取り入れ、一人ひとりの革新的な発想のもとでの創造力を、最大限に発揮させることで、卓越した研究成果が期待できます。また、その成果を社会実装する過程で新たな課題を見つけ、分析し、それをまた基礎研究に還元するという好循環を起こすことが大切です。二つの「D」は、イノベーションを起こすために欠かせないものです。