世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダーギャップ指数2021」が発表され、日本は156カ国中120位だった。この指数は「経済活動の参画と機会」「教育」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」の4分野(14項目)で構成されているが、中でも日本にとっての課題とされているのは「政治的エンパワーメント」(147位)と「経済活動の参画と機会」(117位)。

「経済活動の参画と機会」の分野は、「労働参加の男女平等」「同種業務の給与における男女平等」「所得の男女平等」「管理職における男女平等」「専門職・技術職における男女平等」の5項目で算出され、中でも「管理職における男女平等」は156カ国中139位となっている。

「経済活動の参画と機会」でのジェンダーギャップ解消というテーマに焦点を当てて、日経BP「日経ウーマン」 の2020年「女性が活躍する会社ベスト100」で第1位の日本IBM社長・山口明夫さんに話を聞いた。

山口明夫(やまぐち・あきお)さん/日本IBM社長
1987年日本IBM入社。エンジニア、2000年問題対策、経営企画、テクニカルセールス、米国IBM役員補佐を経て、2007年からコンサルティングやシステム開発などで企業変革を推進するグローバル・ビジネス・サービス事業を担当。理事、執行役員、常務を経て2017年に取締役専務執行役員。同年から米国IBM本社の経営執行委員も務める。2019年5月から現職。

たった1つしか順位が上がらなかったのはショック

 経済界では「国内のジェンダーギャップを解消するため、さまざまな議論や施策も活発になってきたなぁ」と感じていたので、今回たった1つしか順位が上がらなかったのは、正直ショックでした。海外諸国の変化スピードが早いため、日本はなかなか他国を追い越すことができていないのが実情なのかもしれません。

 日本IBMでは2014年から2018年の間、「女性管理職比率」の踊り場にいました。5年間、13~14%で停滞していたのです。これを解決するために、ある施策を打った結果、2019年に17%、2020年に18%と、少しずつですが着実に比率が増え、2025年までに25%にするという目標を掲げています。今回は私たちが実施している女性管理職比率向上の施策を紹介します。

漠然とした不安を約1年かけて取り除く

 その施策は「W50」という育成プログラムです。「この人には管理職を任せられる」という女性社員を50人選び、約1年間かけてファイナンスやマネジメントの講義やディスカッションを行うというものです。さらに、役員によるメンタリングも実施します。この結果、2019年度はW50卒業生の約50%、2020年度は約25%が管理職に昇格しました(2021年1月時点)。

 日本IBMによるW50メンバーへの意識調査(2020~2021年)では、女性社員の約半数が「管理職昇格を打診されても受理するかどうかちゅうちょする」と回答しています。この背景には、管理職になることへの漠然とした不安がある場合も少なくないようです。回答理由を聞くと、「自信がない」「自分に向いているか分からない」が多数。また、結婚・出産・介護などライフイベントを控え、家庭との両立を心配する声も聞かれます。

 この不安の多くは1年間の研修で取り除くことが可能だと思います。ただ、適性ややりたいことは人により異なるので、研修後に100%の人が管理職になるわけではありません。