私も管理職への職種変更を断った経験者

 かく言う私も、30代後半でエンジニアをしていたとき、マネジャーへの職種変更を断ったことがあります。当時はマネジメント業務よりも、エンジニアの仕事を突き詰めたかったのです。職種変更の話を2~3年断り続けた後、「エンジニア以外の仕事もやってみたらいいんじゃない?」と提案され、企画やコンサルティングの仕事を手掛けるようになりました。その後、管理職になって世界が一気に広がったのを覚えています。

 若手社員とキャリアに関する幅広い議論をしたり、社員の成長をサポートしたりと新しい経験をするのはこんなに楽しいものなのだと知りました。エンジニア時代に培った経験や知識をマネジメントに生かすこともでき、マネジャーになったからといってエンジニアの仕事ができなくなるわけではなかったことにも気づきました。

 時には仕事量が増えたり、人事管理・労務管理の業務も生じ、コーチングやエンジニアリングの新しい知識も身に付けたりしなくてはならず、大変さもありました。技術職を究め、最高技術職フェローになるという憧れの道も諦めざるを得ませんでした。それでも、それらをカバーする以上のやりがいがありました。

 もし今、管理職の打診を受けている方がいたら、あまり肩に力を入れず、オープンマインドで挑戦してみてほしいです。管理職だって、社長だって、完璧ではないのですから。分からないことは「分からない」と言えばいいですし、周りに「こんなときはどうしたらいいのでしょうかね」と相談しながら、仕事を一つひとつ乗り越えていけばいいんです。

 仕事は相性も大事なので、全員が全員、管理職になるべきだとは私は考えていません。それでも、食わず嫌いはせず、一度は管理職に挑戦してみて、やはり専門職のほうが合っていたと思うなら、また専門職に戻ればいい。それぐらいの気持ちで挑戦してもいいのではないかと思います。

 「管理職の主な仕事内容は管理業」というイメージを持ち、それが理由で管理職への就任を断る人には、「今は自分の専門性やスキルを磨きながら、プロジェクトをリードするタイプの管理職が増えている。かつ、そのような管理職の必要性が増している」と、自身の世界が広がった経験を踏まえて伝えるようにしています。管理職就任後に「お手並拝見モード」にならないよう、経営層自体の意識改革も必要ですよね。

ジェンダー以外にも多様な人財の育成が、公平性の保持には必要

 今回は女性管理職比率をテーマに、W50について話しましたが、これは社内にある多数の育成プログラムのうちの一例に過ぎません。ほかにも例えば新入社員向け、外国籍社員向け、それぞれの専門職向けなど、多種多様な育成プログラムがあります。育成プログラムが女性管理職向けのものしかないというのであれば、それ以外の社員にとっては不公平になりますが、日本IBMグループではこれからもさまざまな育成プログラムを用意し、すべての「個」が輝ける環境づくりをしています。次に発表されるジェンダーギャップ指数で日本の順位が少しでも改善することを祈っています。

取材・文/小田舞子(日経xwoman編集部) 写真/日本IBM提供