世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダーギャップ指数2021」が発表され、日本は156カ国中120位だった。前回の121位(153カ国中)から1ランク上昇したものの、G7では最下位。この結果をどのように受け止め、生かしていくべきか。弁護士で国連の元・女子差別撤廃委員会委員長の林陽子さんに聞いた。

「国連にお世話になるほど、女性差別はありません」という発言

 ジェンダーギャップ指数の順位が2020年度とほぼ変わらなかったのは、非常に残念な結果です。私は2015年~17年まで国連の女子差別撤廃委員会委員長を務めました。当時、「日本は国連にお世話になるほど、女性差別はありません」と発言した与党議員がいたのですが、日本は国連の提言や先進国の立法モデルを総動員していかないと、この差は縮まりません。

 そもそも、史上最長となった安倍政権の主要政策の一つが女性活躍だったのですが、まったく達成されていません。政府が女性活躍に本腰を入れていなかったことは、2019年の女性活躍推進法(女活法)の改正を見ても明らかです。女活法は事業主に対して職場の女性の状況に関する情報開示を義務付けていますが、「男女の賃金の格差」が義務的な開示の対象に含まれていないのです。

林 陽子(はやし・ようこ)さん/弁護士
1979年早稲田大学法学部卒業、1983年弁護士登録。女性差別、婚外子差別訴訟など女性の権利に関連する訴訟代理人を務めるかたわら、外国人女性のシェルターや性暴力被害者のためのホットラインのアドバイザーとして活動。日本人として初めて国連の女子差別撤廃委員会の委員長などを務める。2018年には英シンクタンクのapoliticalによる「ジェンダー政策に影響を及ぼす世界の100人」に選ばれた。

 育休取得率や役員の女性比率を見るのも大事ですが、女性が本当に活躍しているかどうかについては、賃金が最も現実を反映します。女性が昇進・昇格しない企業では男女の賃金格差も当然大きいですから。「男女の賃金の格差」に関する開示が「選択項目」にとどまっている点は2015年の法制定時から批判され、2019年の改正の際にも女性たちから強い要請があったのに、相変わらず任意での公表にとどまっています。

 賃金差別をしている事業主がわざわざその実態を公開するとは考えづらい。これは近年ますます重要視されているESG投資という観点から考えても問題があります。ESGのS(Social)の中で重要なのは、公正な労働条件であり、ジェンダー平等のはず。その核となる男女の賃金格差を企業が公表しなくていいのでしょうか。