「女芸人」という言葉について、どう思う?
―― 「女芸人」という言葉についてはどうでしょうか。「男芸人」と言われることはあまりないと思うのですが、「女芸人」という呼び方にジェンダーギャップを感じることはありますか?
バービー 私自身は、「女芸人」という言葉に抵抗感はありません。女芸人であることが仕事に生かされる場合もあるので、言葉そのもので良い・悪いを判断できるものではないと思っています。
また、同じ言葉でも、その言葉が使われた文脈や、会話の背景にある個人の考え方によって、言葉が持つ意味やイメージは変わってきますよね。
例えばネタを競う仕事の場合、同じ土俵に立っているのに、「実力ではなく女芸人だから勝ち進めた」という意味で「女芸人」という言葉が使われるのは、本人にとっては不本意なのではないでしょうか。同じ土俵に立ち、実力で競っているのにもかかわらず、望まないカテゴリー分けをされるケースがあるとするなら、それはかわいそうだなと思います。
一方で、「数少ない女芸人の中で勝ち進んだ」という言い回しなら、感じ方は少し違ってきます。「数が少なかった」のはあくまでも事実で、同じ土俵の中で競い、実力で勝ち進んだことを前提として、「女芸人」という言葉を使っていると思えるからです。
明らかに差別的な表現や、仕事の障害となる言葉なら改善が必要だと思いますが、同じ言葉でも、使われる場や使い方によって、その言葉に含まれる意味は違ってきます。単純にOK・NGを出せることではないので、難しい問題だと思います。
課題意識があるなら、少しずつ解像度を上げてみる
―― ジェンダーバイアスやジェンダーギャップを改善していくためには、どんなことが大切だと思いますか? 普段の生活の中で、少しでも意識することが大事でしょうか?
バービー 何も意識しないよりは意識したほうがいいとは思いますが、ジェンダーについて課題意識を持つことが正義で、持たないことが悪ではないと思います。
育ってきた社会背景が異なるので、価値観は世代によっても異なります。今、急速に社会の価値観が変化していて、それに戸惑っている上の世代の方もいるはずです。その方たちを一方的に責めたり振り落としたりせずに、ジェンダーの問題で苦しんでいる人たちに対しては目を向けて、改善できる行動を取っていく。そのバランスが大切なのかなと思います。
今回、ジェンダーギャップ指数の順位は120位でしたが、私たち一人ひとりのジェンダーに対する感覚が120位だとは思いませんでした。特に今の10代、20代はジェンダーに関する意識が高く、私も話していてハッとさせられることが多いからです。
私は「決定権はその人自身にある」と考えているので、ジェンダー課題に関しても、誰かに考えを押しつけたいとは思いません。ただ、少しでもジェンダーについて考えてみたいという人がいるなら、これまで粗く見ていたものを、少しだけ細かく見てみる。普段の生活の中で解像度を上げ、無意識の行動を少しずつ意識していく。そうした作業をしてみるのもいいのではないでしょうか。
取材・文/青野梢(日経クロスウーマン doors) 写真/洞澤佐智子
