失礼がないよう気を配って書いたつもりのメールが、「分かりにくい!」と相手をイラつかせているかもしれません。コピーライターの橋口幸生さんに、簡潔なのに感じがいいメールの書き方を教わりましょう。
「ご相談=交渉の余地あり」と受け取る人も
日本をある病が襲っています。その名は「させていただく症候群」。空気を読みすぎる、過剰な忖度(そんたく)社会が生んだ病です。真面目な人ほどかかりやすく、分かりにくいビジネスメールが蔓延(まんえん)する一因となっています。
仕事でありがちな困ったメールを見ていきましょう。これは以前、私が実際に受け取ったメールをもとに作ったものです。
こちらの提案をクライアントの現場担当は気に入り、ぜひやろうと場は盛り上がったものの、その後に上からNGが出たというシーンを想定してください。
書き手は、伝えにくい内容を失礼がないよう遠回しに表現したつもりなのでしょう。ただ一文が長く、主語と述語の意味が取りづらいこともあり、分かりにくいことこの上ありません。
さらに問題なのは、「ご相談させていただきたく」の部分です。「ご相談」を「考え直してください」の婉曲(えんきょく)表現として使う人が増えていますが、「交渉の余地アリ?」と受け取る人もいます。また「させていただく」から透けて見えるのは、相手に嫌われたくないとの心理。連発すると、「ビジネスより自分が嫌われないことを優先している人」と思われかねません。
「させていただく」的な忖度表現を一掃すると簡潔になります。
簡潔でも、「誠に申し訳ありません」「恐縮です」の2語で相手への誠意は十分に伝わりますし、「見直しが必要」「再提案」はいずれも単刀直入で、誤解の生じる余地がありません。
メールを書くとき、「させていただく」を使わないようにしてみましょう。書きたくなっても我慢し、別の言い方を考えるのです。それだけでメールがぐっと分かりやすくなります。
伝わるメールを書く際に意識したい3つのルールを見ていきましょう。