人生最後の日に何が欲しい? と聞かれて「お金」と答える人はいないはず。本当の幸せを感じるお金との付き合い方を哲学者と投資家が語り合いました。哲学者は、山口大学教授で、NHK Eテレ『世界の哲学者に人生相談』の指南役を3年間務めた小川仁志さん。投資家は、抜群の目利き力で実績を積み重ねてきた農林中金バリューインベストメンツCIO奥野一成さん。異色の組み合わせが語る新たな法則とは。
お金の目的って?
編集部(以下、──) 「お金と幸せ」について読者の方々に質問を募りました。集まった回答のうち、39歳の読者からは「貯蓄や節約は苦ではないが、そのお金をどうしたいかの目的が見えない」という悩みが寄せられました。
小川仁志さん(以下、小川) まず、「お金は目的か手段か」から考えましょうか。哲学者のジンメルは「お金とは最終的な価値への橋渡しである」といっています。人は橋の上に住み着くことはできません。大切なのはその橋を渡り、どこに行くのか。つまり、お金は自分が幸せを感じるための手段にすぎないといっているわけです。
奥野一成さん(以下、奥野) 「お金を使って楽しい気持ちになるのはどんなとき?」を想像してみてはどうでしょうか。私はお金とはなんらかの価値を提供したときの「ありがとう」という言葉だと思っています。例えば、「人はなぜディズニーランドに大人1日8200円を払って何度も行きたくなるのか?」──それだけの満足感があるからです。価格はあなたが払うもの、価値はあなたが得るもの。お金と上手に付き合うにはこのパラダイムを持つことが大切です。