Twitterから生まれた、連作短編コミック『メンタル強め美女白川さん』。コミックは累計30万部超えのヒットで、この春にドラマ化もされて大人気となっている同作の作者・獅子さんに、日経WOMANが独占インタビュー。主人公の白川さんや、個性豊かな登場人物に共感する人が多いのはなぜだと思う? 落ち込んだときに元気になれる白川さんの言葉を生み出す方法は? 気になる疑問を直撃しました!

読者が自分を投影できるキャラクターをつくる

編集部(以下、編)『メンタル強め美女白川さん』が注目され、テレビドラマ化までされた現象をどう捉えていますか。

獅子さん(以下、獅)書籍化やドラマ化に発展するなんて、Twitterでマンガを発信し始めた頃は、思いもしませんでした。私自身、まだふわふわとしていて実感がないのが正直な感想です。こうした作品に成長した理由を挙げるなら、時代の流れとともに「自己肯定感の低さ」や「生きづらさ」といったワードが私たちの生活に浸透し、自分の心に向き合う方が少しずつ増えていることが、この作品への共感につながっているように思います。

 白川さんにも多くのファンがついてくださっているのですが、そのほかの登場人物にも共感してくださる方が多いんです。例えば、自己肯定感が低めの町田さんや、外見にコンプレックスがある林檎ちゃん。また、白川さんの言動にイヤミを言う女の子にも共感する読者もいると思います。

 でも、そんなイヤミを白川さんが正論でダメだししてしまうと、イヤミを言う女の子に共感した読者が「私って性格悪いな…」と傷ついてしまうかもしれないので、白川さんの代わりにコミカルにツッコめる姉御肌の梅本さんを登場させました。

 担当編集さんと相談しながら、人間の代表的なコンプレックスや悩みが作品のなかで描けるように、1人ずつ個性を立ててサブキャラクターをつくっていったイメージです。読者は登場人物の誰かに自分を投影して応援してくださり、結果的に頑張る女の子の群像ドラマとして愛していただいているのかなと担当編集さんと話しています。

 「メンタル強め」というテーマを設定されたのも、「生きづらさ」などの時代の流れを肌感覚で感じていたからですか?

 これはもう、正直何も考えていなくて。「生きづらさ」などをテーマにした本が売れていたことは知っていましたが、私が女の子を描くことが好きで、最初はただ「強くてかわいい女の子」を描きたかったんです。日常のストレスをうまくかわす、発想の転換が上手な女の子を。自分自身が持っていないものを持っている女の子を描こうと思ったら、白川さんが生まれたというイメージですね。私自身がつらいことがあって落ち込んでいるときに、こんなふうに優しく励ましてほしいと思う、ある種のファンタジーをマンガにしています。

 読者からはどのような反響がありましたか。

 仕事で疲れて家に返ってくるような時間帯にTwitterを更新しているので、「『白川さん』を読んで元気になりました」「明日はもうちょっと頑張れそう!」「これならマネできそう」などの感想をいただくようになりました。

 Twitterに感想をくださる女性読者のつぶやきをのぞくと、私から見たらものすごく頑張っているのに、「自分は本当にダメ」などと謙遜でなく本気でツイートされている方が多くて驚きました。

 「Aちゃん、すごく素敵」「Bさん、すごいなぁ」などと人のことは褒められるのに、自分のことになるとみんな厳しい。頑張り屋さんが多いのだと思います。だからこの作品が、「みんな十分頑張っているよ」と肯定できるように、読者に寄り添う、癒やしの存在になればと思いながら描いています。

 獅子さん自身が好きな、白川さんのセリフを教えてください。

 たくさんありますが…。「白川さん」を描くうえで根幹になっていると思うのは、1巻の最初のエピソードのセリフです。

「誰かの評判を下げたからって自分の美しさが増す訳じゃないのに」
「『私もキレイ あの子もキレイ』でいいじゃん」

 誰かと比べるのではなく、みんなそれぞれ素敵な部分があって、その上で「私は私が好き」というのが、白川さんの自己肯定感の育み方です。ここはブレないように作品を作っています。

『メンタル強め美女白川さん』1巻p.10〜「白川さんと人気モデル」より抜粋
『メンタル強め美女白川さん』1巻p.10〜「白川さんと人気モデル」より抜粋