トップダウン組織の強み

鳥取県警察本部警務課課長補佐の河原裕恵さん(以下、河原) 17年度は1.1%、18年度は6%と低迷していました。15年度の「イクボス」宣言は県全体に対するものでしたが、県警ではなかなか、浸透させることができずにいました。

 転機となったのが19年度初頭の警務部長通知です。警務部長は県警本部長に次ぐ、県警のナンバー2です。警務部長名の通知で「1歳未満の子を養育している男性職員は、本人の意向を尊重したうえで、可能な限り2週間以上の育児休業を取得すること」と明確にしました。

―― 通知だけで職員の意識が変わるものですか?

河原 警務部長の通知は、県警の男性職員からすると「衝撃的」でした。というのも、県警の男性職員にとって、育休は「取るか、取らないか」という選択ができるものという感覚がそもそも、あまりありませんでした。

育休取得者を増やすポイント(警察部門)
・トップが「男性に育休を取ってほしい」という意向を明確にすること

 もちろん、制度上は取ることが可能です。しかし、例えば、15年度の男性の育休取得率は0%です。その前の年も、その前の年も……という状況では、男性職員が育休を取るという考えを持つこと自体が難しかったのかもしれません。警務部長の通知で「男性でも取れるものなんだ」という意識が広がり、実際に取ってみようと思う職員が増えました。

―― それでも、現場の職員からは、言い出しにくいのではないでしょうか?

河原 警務部長が通知を出すということは、つまり現場の上司たちの通知でもあるわけです。現場の上司たちも当然「県警全体で男性育休を普及させたいのだ」ということをすぐに理解してくれました。育休の対象となる現場の警察官が「取得したい」と申告した場合、上司がそれに難色を示すことはないと、県警全体に理解が広がっています。

―― トップダウン式の警察組織らしい側面かもしれないですね。急に男性育休取得率が上昇することで、現場の混乱はありませんでしたか?

河原 詳しいヒアリングがまだできておりませんが、業務の引き継ぎや育休取得を早めに報告するなどの工夫で混乱は最小限に抑えられていると聞いています。

―― 他県の警察の男性職員の育休取得率は、ほとんどが数%です。0%も珍しくありません。鳥取県同様にトップが方針を明確にすれば、男性の取得者が増えそうですね。

河原 その可能性はあるかもしれませんね。鳥取県では警務部長が通知を出す前に、県警トップの女性本部長が「男性育休を何とか広めたい」という意向を持っていました。そういった下地があったからこそ、警務部長の通知が出た際、職員たちが「やっぱり県警は本気なんだ」と感じてくれたんだと思います。


 男性地方公務員の育休取得率を上げるために各自治体はどのような取り組みを行っているのか。今回は、岐阜県と鳥取県の取り組みを取材しました。両県とも、トップが明確な指針を示し、人事や総務部が地道な声掛けをすることで男性育休の推進に成功していることが分かりました。

岐阜県・鳥取県を通じたポイント
・組織のトップが「男性育休を推進したい」と明確にする
・人事、総務など現場の「外」から、育休取得者のいる職場に働きかける
・働きかけは育休対象者ではなく、マネジャー層へ働きかける

取材・文/飯島圭太郎(日経xwoman編集部)