「管理職をやりたがる意欲的な女性がいない」「優秀な女性に管理職への昇進を打診しても断られてしまう」……。その背景としてしばしば指摘されるのが、優秀なのに自信が持てない「インポスター症候群」という心理状態です。数年前からこの状態に着目してきた、全身脱毛サロン キレイモなどを運営するヴィエリスの執行役員・佐伯真唯子さんは、自信が持てない理由を本人に背負わせるのではなく、社員が自然と自信を持てるような職場環境・雰囲気を作ることが大切だと言います。企業にとって必要な取り組みを聞きました。※文中の肩書は取材当時のものです。
海外の著名人が「インポスター症候群」を告白
インポスター(imposter)という単語には、詐欺師や偽者という意味がある。インポスター症候群とは、客観的な成功を収めているにもかかわらず、自分の能力に自信を持つことができない心理状態のこと。病気ではなく心理的概念で、成功している女性に特に多いとされる。1978年に心理学者のポーリン・ローズ・クランスとスザンヌ・アイムスが提唱した。
クランスらによれば、インポスター症候群の人は自分が成功したのは偶然や運などのせいだと考え、自身の能力に自信を持つことができない。むしろ周囲をだましているような後ろめたい感覚に陥り、偽者であることをいつか見抜かれるのではないかと不安を感じてしまう。
近年ではメタ(前フェイスブック)COO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグや俳優のエマ・ワトソンなどがインポスター症候群に苦しんできたことを明かし、話題になった。日本では、女性管理職がなかなか増えない理由の一つとして挙げられることがある。

ヴィエリスの執行役員・佐伯真唯子さんは、人材育成の立場からインポスター症候群に注目してきた1人だ。「優秀な女性に管理職(店長)への昇進を打診しても、『私なんて無理です』『ほかの人のほうが適任です』などと断られてしまうことが過去によくありました。『いつかは管理職を目指したい』と語っていた女性ですら、いざ打診すると『無理です』と尻込みしてしまう。本人に客観的な実績があり、周囲から認められているにもかかわらず、自己評価がとても低い。これはインポスター症候群に当てはまるのではないかと思いました」