男性は「普通の人」も出世しているのに、管理職に就く女性は、環境にも恵まれた「優秀な人」ばかり。こんな事例に思い当たることがある人もいるのでは? ご存じのように、日本の管理職の女性比率は、他の先進国に後れを取っています。理由は「女性側の意識」とよくいわれますが、詩人・社会学者の水無田気流さんの新刊『多様な社会はなぜ難しいか』によれば、「女性側の意識」の背景には、もっと根源的な、日本社会の問題があるようで――。

女性活躍関連政策は「日本女性超人化計画」

 おかげさまで、私も女性の働き方やダイバーシティについての講演やシンポジウムに呼んでいただく機会が増えた。あるシンポジウムに登壇したとき、私たちの討議の前に同じ会場で「女子大学生のための就活セミナー」が開催されていた。

 控室でモニター越しに話を聞いていると、登壇者の女性は男女雇用機会均等法施行以前から一流企業の総合職相当で勤務し、役員まで上り詰めた人のようだった。毎日終業後に保育所へ子どものお迎えに走り、お風呂に入れて夕飯を食べさせ、寝かしつけてから毎晩会社に戻り、深夜まで仕事をしてきた。仕事のペースもいっさい落とさず、出世も諦めず、子育てもすべて自分で行ってきたという。本当に、立派な方である。

 ただ「私ができたのです。あなたたちもできるはず」と語るその人の話に、心なしか会場の女子大学生の皆さんの雰囲気が、凍りついていったように見えたのは気のせいか。

詩人で社会学者の水無田気流さん
詩人で社会学者の水無田気流さん

 日本で女性がフルスロットルで「仕事も家庭も」両立させて駆け抜けるには、F1ドライバー並みの努力が必要なのかもしれない。「自然体」などでいたら、とてもではないが不可能だ。

 私は仕事と家庭の両立を女性に「むちゃぶり」するような女性活躍推進関連政策を、「日本女性超人化計画」と呼んだ。

 この国で「普通の男性」が管理職を務めながらパートナーや子どもを持つのは「自然」なことだ。しかし、「普通の女性」には依然、とてつもなく難しいのである。そのことを多くの人に理解してほしかったからだ。