これで終わりではない。政界でも風向きが変わってきている

 今回の判決では、4人の裁判官が、夫婦同姓を定めた規定を違憲とする少数意見を出した。弁護団の寺原さんは「この少数意見には、われわれと同じ意見が、非常に力強く書かれていて、説得力がある」と語る。

 「少数意見の中には、『自由かつ平等な意思決定』という言葉が何度も出てきて、それが侵害されていることを主張しています。例えば15年の判断にある『夫婦どちらの姓を選ぶかは夫婦の協議で決めるのだから強制ではない』との記載についても、そもそも夫婦がどちらも姓を変えずに婚姻する選択肢が用意されていないではないか、と一蹴しています。

 また、合憲とした多数意見の中でも、『国会が不断に目をくばり対応すべきだ』として、前回より強く国会の対応を促している。ここ数年で、各自治体から、選択的夫婦別姓を求める多数の意見書が国に出されていることも、確かに事実認定されています」。国会にボールが投げられてしまったことは停滞ではあるが、進歩が全く見られないわけではないとする。

現在、婚姻届には「婚姻後の夫婦の氏」という欄があり、「夫の氏」「妻の氏」のどちらかを選択する方式。夫婦の両方の氏を選択した婚姻届は、提出しても受理されない
現在、婚姻届には「婚姻後の夫婦の氏」という欄があり、「夫の氏」「妻の氏」のどちらかを選択する方式。夫婦の両方の氏を選択した婚姻届は、提出しても受理されない

 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の井田さんも、「次は立法府のアクションが求められているが、菅政権になって以降、政界での風向きは確実に変わってきている。衆院選まで自民党内の議論は延期された状況ですが、自民党の中にも人権意識を持つ議員は増えてきています」と期待する。「落胆はしていません。裁判もこれ一件ではなく、今後も続いていく。そして私たちは自由や権利を取り戻すために、世論を自分でつくることができるのです」

 サイボウズの青野さんも「世論自体は(選択的夫婦別姓の)賛成派が多数になっている。今回の合憲判決が出たことで、メディアに取り上げてもらい、さらに関心度が高まり、賛成が増える循環に入っていると思う」という。

 この問題に再び焦点が当たる日がさほど遠くないことは、間違いなさそうだ。

※井田奈穂さんについては詳しいインタビューを後日掲載します

取材・文/臼田正彦(日経xwoman) イメージ写真/PIXTA