紫乃ママ 夫婦別姓の否定に何を思う?

 日経xwoman ARIAの人気連載「昼スナックママに人生相談」でもおなじみの「紫乃ママ」こと木下紫乃さんは、自身が3回姓を変えた経験を持っています。

「紫乃ママ」こと木下紫乃さん。1991年、リクルート入社。転職数社の中で主なキャリアの中心は企業研修設計、人材育成等。2016年、40、50代の「自分で選ぶ働き方生き方」を支援する会社ヒキダシを設立。企業研修や中高年のメンタリングを生業とするかたわら、東京都港区に「昼スナックひきだし」を開店、紫乃ママをつとめる。
「紫乃ママ」こと木下紫乃さん。1991年、リクルート入社。転職数社の中で主なキャリアの中心は企業研修設計、人材育成等。2016年、40、50代の「自分で選ぶ働き方生き方」を支援する会社ヒキダシを設立。企業研修や中高年のメンタリングを生業とするかたわら、東京都港区に「昼スナックひきだし」を開店、紫乃ママをつとめる。

編集部(以下、――) 「合憲」の判断を見て、どう感じましたか?

紫乃ママ やっぱりなあ、変わんないなあ、というのが第一印象です。私は昭和世代なので、変わらない日本に慣れ過ぎているところがあるけれど。もちろん、日本でも女性の権利の状況はどんどん変化しているんですけど、ベースの部分を変えるのは一筋縄ではいかないことが証明された。

 私ね、3回結婚していて、姓は今ので4つ目なんです。改姓手続きの大変さや不便を実感しているから、「なぜ私だけ?」「いい加減にして」という気持ちがある。だって、相手の男性はみんな、その手間がないわけで。

 役所も銀行も、とにかく手続きに時間がかかる。いちいち、名前が変わったことを証明する戸籍謄本とかが必要になったり。まだ変更できてないのがどれなのか分からなくなっちゃって、いまだに2つ前の姓のままの銀行口座もあります。でもある日突然、あれを変えていなかったせいで別の手続きが進まない、みたいな状況が来る。もらえるはずのお金がもらえない、口座からお金が出せないといった、現実的な不利益が結構あります。子どもがいる人の場合、そこに子どもの手続きが加わるんですよね。

―― 3回目の結婚では、どちらが姓を変えるかという話にはなりませんでしたか?

紫乃ママ そこはあまり意志が強くなかったんで、主張しませんでしたね(苦笑)。夫の側からすれば、「前の結婚の時は変えたのに、俺の時は変えてくれないのか」っていう、男の沽券(こけん)みたいな話になっちゃう気もして。

 でもこの制度、うがった見方をすると、離婚をしづらくしている仕組みなんだなあ、とか思います。このまま続くんだとしたら、また姓を変えることにならないように、離婚しないように気を付けないとな、とか本末転倒なことを考える(笑)。制度がこんなふうに人の行動を縛るのは、本来良くないですよね。

「嫌いな元夫の姓を不本意に使い続けた」

―― 4つの姓の中で、一番愛着があるのは?

紫乃ママ もちろん最初の、生まれた時の姓ですよ! 今の姓は木下なんですが、10年たってもぶっちゃけ「木下って誰だよ!」って感覚はある。姓が変わると、自分の印象まで変わっちゃいますよね。望まないのに、強制的に印象を変えられてしまうというのは、人権侵害だなと思う。

 私、2回目の離婚の後、元夫の姓を使い続けたんです。次にいい人に会えて結婚することになってまた変えることになったら、手続きが2倍になるから。

 でもね、本当は私も元夫の姓なんて使いたくなかったですよ。実は元夫から「俺の姓を使うのをやめろ」って要求されたこともある。でも、屈辱だけれど、手間が大きすぎるせいで、嫌いな姓を使い続けることに。

―― なぜ日本では、選択的夫婦別姓の機運が高まらないんでしょう。

紫乃ママ デメリットが顕在化しづらくて、「そういうもんでしょ、なんでわざわざ変える必要があるの?」くらいの感覚の人が多いんでしょうね。

 中高年だけじゃなくて、若い世代でも、そういう感覚の人はいる。とある地方議員さんに聞いたんですが、その地方議会で夫婦別姓を求める決議に数人だけ反対したのが、全員30代の男性だったんですって。世代だけじゃなくて、どんな家庭で育ったかは大きいんじゃないかな。

 でも、家族の形ってどんどん変わっています。ずっと別居婚でもすごく仲良しの夫婦も知ってる。過去の価値観なら、「そんなの結婚とはいえない」ってなりますよね。でも、お互いが良ければ、形はなんでもいいはず。結婚のフレキシビリティーが上がったほうが、子どもだって生まれやすいのになあって思います。

 だから、声を上げ続けている人は尊敬するし応援したい。日本が変わってほしいけれど、他にもやらなければならないことも多いし、忙しさから行動できない状況の人は多い。「しょうがない」って思わずに、身近な人との議論のテーマに出し続けることが大切なのかなって思います。

取材・文/臼田正彦(日経xwoman)
写真/稲垣純也(井田さん)、洞澤佐智子(紫乃ママ)