取得率が低いままの業界も

大嶋 金融業・保険業、そして情報通信業が突出して高い水準です。金融は20年度31.04%でした。19年度から10ポイント以上伸ばしています。情報通信業は14.84%です。

 金融業・保険業はもともと、女性の多い職場です。女性のさらなる活躍を目指して、いわゆる「一般職」を廃止し管理職昇進が可能なコースに統合したり、職域を拡大したりするなどの取り組みも行われてきました。だからこそ女性たちが、結婚・出産を機に退社してしまうことに対し、業界として、もともと強い問題意識がありました。

 逆に取得率が低いままの業界もあります。例えば、電気・ガス・熱供給・水道業は2.95%と平均を大きく下回ります。不動産や建設といった業界も数パーセント台と低く、緩やかに上昇しているものの、先行する産業との差が開いています。

金融業・保険業は3割越えと高い水準
金融業・保険業は3割越えと高い水準

―― 取得率が低い業界は、業界、もしくは企業の自助努力で改善は可能ですか?

大嶋 男性の育休取得率が低い業界の特徴の一つに、小規模な企業が多いことが挙げられます。例えば建設や不動産業・物品賃貸業では、小規模な企業の割合がそれぞれ95%、97%に上り、従業者のうち小規模な企業に勤める割合も農林水産業を除く産業平均の2倍以上です。小規模な企業ほど一人が多様な役割を担い、代替要員の確保も難しいため、男性の育休取得に積極的になりにくい事情があります。取引先の都合で業務量が変動しやすい下請け企業では、人手が減ることで納期を守りづらくなることもあるでしょう。

 実際、育休取得が進んでいないのは、規模の小さな事業所です。20年度のデータを事業所規模別に見てみると、100人~499人の事業所の取得率は17.21%、500人以上は13.09%といずれも平均を上回ります。一方、5~29人の事業所は9.68%でした。

 建設や不動産業など小規模な企業が多い業界では、業界団体や国によるさらなる取り組みが必要だと思います。例えば業界団体が旗を振って、産業全体で男性も育児休業を取得しやすい働き方を推進することや、政府が男性の育休取得を推進するために設けている助成金について小規模な企業向けの支給を拡大すること、助成金受給に関わる計画策定や手続きをサポートすることなども考えられます。

―― 大嶋さんは雇用均等基本調査におけるデータの不足も指摘しています。

大嶋 産業別のデータはあります。事業所規模別のデータもあります。一方、産業別と事業所別のデータを組み合わせた動向や地域別のデータは一般向けに公表されておらず、どこに課題があるのかを研究者やメディアなどが把握しにくい状況にあります。例えば、「不動産業×事業所規模500人以上」の男性育休取得率、というデータは雇用均等基本調査になく、政府の他の部門もデータを出していません。

 業界ごとの課題の把握やマクロデータの改善など課題は山積しています。ただ、男性育休の取得率が1割を超え、また、来年から改正法が施行されることもあるので、当面は男性育休の取得率は上昇トレンドが続くでしょう。その間に、一企業の努力では難しい部分を少しずつ改善していってほしいと思っています。

取材・文/飯島圭太郎(日経xwoman)

大嶋 寧子
リクルートワークス研究所  主任研究員
大嶋 寧子 東京大学大学院修了後、富士総合研究所、外務省出向、みずほ総合研究所を経て、2017年より現職。育児や介護など制約のある労働者のキャリア形成と活躍推進、デジタル時代における就業者のスキル再開発などをテーマに研究。著書に『不安家族―働けない転落社会を克服せよ』(日本経済新聞出版)。東京大学経済学研究科博士課程在学中。