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長野智子 スピーキングテスト巡る問題 都教委の回答は

11月下旬の初実施を目前に、いまだに疑念や不安、反対の声が上がり続ける状況の中、長野智子さんが東京都教育委員会に独自取材。今後の課題は

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今年から都立高校入試で英語のスピーキングテストが実施されるが、11月下旬の実施が目前に迫った今もなお、一部の保護者や政治家などからは「受けなければならない生徒と、受けなくてもいい生徒がいるのは不公平では」「ベネッセに決まった経緯が不透明」などと、仕組みの妥当性や公平性などに対して疑問の声が上がっている。渦中にある東京都教育委員会(都教委)に、キャスターでジャーナリストの長野智子さんが独自取材。その模様をリポートする。

都内の公立中から都立高を受験する8万人が対象

 日本人は英語学習に時間をかけてもなぜ話せないのか。高校時代に英語教科が得意だった私自身、大学に進学して帰国子女を前に自分のスピーキング能力に絶望した記憶があるので、以来日本の英語教育に疑問を感じてきた。ようやくここ数年、学校でもコミュニケーションとしての英語力を身につける英語教育にシフトしてきたと聞いていたが、そこにきて勃発したのが、「都立高入試スピーキングテスト導入問題」である。

 東京都教育委員会(都教委)は都内の公立中から都立高を受験する8万人を対象に、11月27日、「ESAT-J」(イーサット・ジェイ)というスピーキングテストを実施し、その結果を都立高校入試に活用することに決定した。「ESAT-J」とは都教委がベネッセコーポレーションと共同で開発した、タブレットを使用して行う英語のスピーキングテストである。

 これについて、

―事前の説明が不十分
―スケジュール的に無理があるのでは
―受験できない・しない「不受験者」の扱いが不公正では
―個人情報登録をなぜ民間業者(ベネッセコーポレーション)に委託するのか

 といった疑問が保護者から噴出。教育学専門の武蔵大学・大内裕和教授が代表を務める「入試改革を考える会」が、「入試において最も重視されなければならない公平性や公正性が失われる」と訴えるなど、専門家たちからも痛烈な批判、導入反対の声が上がっている。都議会では立憲民主党などが英語スピーキングテストの結果を来春の都立高校入試に活用しないよう求める条例案を提出して否決されるなど大混乱の様相を呈しているのだ。

 いったい何が起きているのか。なぜここまで不満、不信が広がっているのか。都教委に取材を申し込んだところ、一カ月後に取材の許可がおりた。実際に取材をしてみると見えてきたのは、都教委と入試を目前に控えて不安な保護者たちとの間にある圧倒的な溝である。

 そこで今回、保護者の疑問や不安を事前取材して都教委にぶつけることにしたが、取材で得られた都教委の声を伝えたところ、保護者たちから改めて反論や不安の声が上がった。その一部始終をお伝えしたい。

 10月初旬、都庁の会議室で主に私の質問に答えたのは、東京都教育庁指導部の瀧沢佳宏指導推進担当部長である。瀧沢部長は今回のスピーキングテストの計画、立案、実施を担当している。他に入学選抜担当の山田道人課長、国際教育推進担当の西貝裕武課長、山本一之介課長が同席した。

長野 まず、現在都立高入試へのスピーキングテスト導入について都議会で大きな議論となり、保護者から不安の声が上がっている現状についてどう捉えていますか。

瀧沢 やはり1学年8万人の子どもに関わっていることですから、さまざまな立場の方にさまざまな観点からご指摘いただくことは重要なことだと思います。ただ計画自体は4~5年前から進めている。周知についてもさまざまな関係者の意見をもらってここに至っています。テストの申し込み自体、既に締め切りまして、95%のお子さんが完了しています。この時期にこれまで議論してきたことについて、事実に基づかない批判・風評が広がることには強い懸念を持っています。

長野 事実に基づかないこととは何ですか?

瀧沢 例えば、いわゆる「選択的不受験」(特別な事情がないのに受験しない)や「意図的受験」など、メディアが名前を付けているものですが、そのようなことは制度上まったくありません。体調不良は証明書が必要ですし、もし理由なく受験をしなければ「0点」です。受験をしないほうが得になることはない。一部の人から風説や曲解が広がって一般の人にも不安が広まっています。

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