「私が投票に行っても、世の中が変わるのだろうか」──10月31日に第49回衆議院総選挙がありますが、衆議院が10月14日に解散して19日に公示というあわただしいスケジュール(解散から投票日までが17日というのは、戦後最短の短さ)で、投票する気持ちが盛り上がる前に投票日が終わってしまいそうです。いいえ、そんなことにせず、選挙に向き合いませんか。この短期決戦。私たちは各党の動きをどう捉えればいいのか、『つながるつなげる日本政治』(弘文堂)の編著者で神奈川大学教授の大川千寿さんに教えてもらいました。

岸田首相が主張する「新しい自民党」の矛盾

日経xwoman編集部(以下、――) 岸田政権の党役員人事、閣僚人事にはどのような印象を持ちましたか。

大川千寿さん(以下、大川) 新総裁・首相の岸田文雄氏からは、「新しい自民党を見せたい」という姿勢が感じられます。その背景には、菅義偉政権の「説明不足で国民に声が届かなかったこと」への反省があると考えられます。

―― なぜ菅内閣は国民の支持が得られず、1年余りの短期政権になってしまったのでしょうか。

大川 菅政権ではコロナの感染の広がりを抑えきれず、特に第5波では爆発的に増加し、対策は暗中模索の状態でした。コロナ対策の苦戦は、誰が首相であってもある程度避けられなかったと思われ、この点では同情の声が上がっています。しかし、菅前首相はもともと無口な性格もあってか、政策について国民が納得する説明ができていませんでした。一方通行な発信になりがちで国民に寄り添うことができなかったことが、支持率の低下につながった要因の一つだと考えられます。

 岸田首相は自民党総裁選にあたり、「民主主義の危機」と表現し、総裁に選出されたときには「丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかり取り戻したい」 と発言していました。自民党には現在7つの派閥がありますが、岸田首相は「宏池(こうち)会」の会長を務めています。

 今回の発言は、宏池会の創設者・池田勇人氏が総理大臣として掲げた「寛容と忍耐」を意識していると言われています。長く続いた第2次安倍晋三政権や菅政権からの政治の転換を求める声が国民に強いとされる中で、岸田首相は大先輩の池田さんにならいながら、今までとは違う政治の色を打ち出したいというわけです。

 しかし新内閣の面々を見てみると、「3A」と呼ばれる自民党の実力者である安倍元首相、麻生太郎副総裁、甘利明幹事長の影響が色濃く残る人選でした。女性大臣が3人選出されたり、衆院当選3回の若手議員が抜てきされたりするなど、真新しさは多少あるものの、全体的には派閥のバランスを配慮した顔ぶれになっています。

 岸田首相は新しい自民党を目指して、「国民の声を聞く」「説明をしっかりする」とアピールしています。しかし閣僚人事を見ると、従来の自民党から抜け出せていない印象があります。人々には、それが矛盾として映っているかもしれません。

 実際、共産党の志位和夫委員長は「(自民党は)表紙を変えても中身は変わらない」 と発言していますし、立憲民主党の枝野幸男代表も同様に「新総裁として、安倍・菅政権と何がどう違うのか、説明してもらうことが最初だ。自民党は変わらない」と苦言を呈しました。