「女性リーダー」という言葉には偏見やステレオタイプがある

―― 続いては大使の2人にお話を聞きたいと思います。日本における女性管理職の比率が国際水準に比べて劣っている理由や、女性が世界で活躍するために必要な要素について、教えてください。

リーナ・アンナーブさん(以下、アンナーブ) アラブ諸国の出身でイスラム教の女性としてお話しします。日本において、「女性リーダー」という言葉には国や宗教と同じように、偏見やステレオタイプがあると思います。でもいいリーダーというのは「女性だから」「男性だから」と性別で区切るものではなく、組織のために仕事ができる優秀な人のことを指します。

 私はリーダーとして、女性ということは意識せず、チームの中心に立ち、お互いのために声を上げることを大切にしています。声を上げることには責任が伴うので、単に発言するのではなく、道徳的であることも意識しています。

 「女性リーダー」に対する偏見やステレオタイプを壊すには、ほかの国と同じく、私たち世代が積極的に戦わなくてはいけません。そのためには秋田さんが言っていたように、女性にも男性にも、ほかの世代の人にも耳を傾け、若い世代のためのロールモデルになることが大切です。

アンナ・ポラック=ペトリッチさん(以下、ポラック=ペトリッチ) 一般的に、「社会が発展するために女性リーダーの存在は重要だ」という意見はありますが、主導的な立場の女性が増えてきたのは最近です。だから、女性リーダーが社会にどのようなインパクトを与えているのか推し量るのはとても難しいです。

 「女性リーダーが増えたら貧困は撲滅できるのか」「気候変動のリスクは減るのか」分からないですよね。でも女性リーダーがたけていることはいくつかあり、今回は3つ挙げたいと思います。それは「コミュニケーション」「共感」「リスク対策」の能力です。

 女性リーダーの多くは他人の感情を深く理解し、民主的で共感力の高いメッセージを送れるように思います。ニュージーランドの女性首相が赤ちゃんと共に会合に出席したことはそれを象徴していると思います。また、小池百合子都知事がコロナ禍で頻繁に記者会見を開き、新型コロナウイルスの脅威についてたくさんのメッセージを送っていました。

 女性リーダーがどのように世界を変えられるのかは分かりません。しかし少なくとも、コロナ禍においては、これらの能力を持つ女性リーダーのほうが適切に対応できていると思います。