飲み方にも多様性が認められる時代に
こうした世の流れをアルコール飲料メーカーは、どう考えているのだろうか。
アサヒビール新価値創造推進部の京谷めいさんは「世界的にダイバーシティ&インクルージョンが進む中で、お酒の飲み方も変わっていく必要があります」と話す。
アサヒビールが20年11月に「飲み方の多様性」について調査したところ、お酒を週1回以上飲用している人、アルコールは体質的にあまり/まったく飲めないがお酒の場が好きな人、いずれも「現状の飲み方に不満がある」と答えた人は半数近くにもなった。
【調査対象】一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)に在住する20~69歳の成人男女でパート・アルバイト含む有職者
【調査方法】インターネット調査
【調査期間】20年11月20日~11月24日
Q1.あなたは「飲み会やお酒の飲み方(自宅以外)」に対して、「人にはあまり言えないけれど、実は内心で不満や不自由さ、不快感、窮屈さ」を感じていたことはありますか。
Q2.あなたは「飲み会やお酒の飲み方(自宅以外)」に対して、具体的にどのような「不満や不自由さ、不快感、窮屈さ」を感じていましたか。
Q3.これからの生活での「飲み会やお酒の飲み方」に関して、ご自身について当てはまることをお答えください。
こうした消費者の声を受け、アサヒビールでは20年12月に「飲みたいとき、飲めないとき、飲めない人とも楽しめるスマートな飲み方」として「スマートドリンキング」を提唱。アサヒビールだけでなく、大手ビールメーカーは同様の取り組みをしており、キリンはスロードリンク、サントリーはドリンク・スマートといった言葉で適正な飲み方の提案をしている。
アサヒビールでは、あえて飲まない人、飲めない人に向けてアルコール分0.5%以下の「微アル(微アルコール)」やノンアルコール商品の開発を進めている。25年までに、アルコール分3.5%以下のアルコール、およびノンアルコール商品の販売容量構成比を20%にするという目標を掲げ、「Responsible Drinking Ambassador」というグローバルスローガンを策定して、「責任ある飲酒」を推進する取り組みを始めている。同社のホームページを見れば、純アルコール量(g)がそれぞれの商品に掲載されている。
「責任ある飲酒」の一環として社員向けのオンライン研修も行い、お酒の基礎知識や適切な飲酒量についても学んだという。
「こちらのオンライン研修には21年10月末時点で4268人の社員が参加し、『適度な飲酒って1日20gなんだ』『改めて飲酒することについて考えさせられた』と反響があり、お酒と飲み方に対する社内の意識もかなり変わってきています。お酒は適切に使えば最高のコミュニケーションツール。これからは誰もが楽しめる、飲み方の多様性が認められる時代になると思います」(京谷さん)。
取材/三浦香代子(日経xwoman) 写真/方丈社提供、イメージ写真はPIXTA