「男女の役割が入れ替わった」だけでは根本解決にならない

―― 女性がキャリアを優先した場合、夫婦間に亀裂が生じるケースも少なくありません。その点、田中圭さんが演じる夫の日和(ひより)は、多忙な凛子に代わって朝食を作るなど、性別役割分担にとらわれずに妻を支える理想の夫として描かれています。

多忙な凜子と、妻を支える夫・日和。(c)2021「総理の夫」製作委員会
多忙な凜子と、妻を支える夫・日和。(c)2021「総理の夫」製作委員会

中谷 そうですね。ただ、今まで求められていた男女の役割が逆転しただけでは、解決にならないだろうという気もします。劇中では、日和くんが総理官邸への引っ越しを余儀なくされて、ライフワークだった鳥の観察ができなくなったり、自分のプライベートを脅かされたりと、いろいろなことを諦めざるを得ず、葛藤する様子も描かれています。

 映画はあくまでフィクションなので、お許しいただければと思いますが(笑)、「どちらかが我慢を強いられる」という構図が変わらないままでは、根本的な問題の解決にはならないかもしれません。もちろん、夫婦のあり方はそれぞれ異なって当然だとも思っていますが。

―― 夫婦のどちらかが犠牲になるのではなく、お互いに自己実現できる関係が理想ですよね。

中谷 そのためには、共働き夫婦が家事をアウトソーシングしたり、育児の一部をベビーシッターさんにお願いしたりするなど、ある程度のサポートを入れることがもっと簡単にできるようになる制度が必要だと常々感じています。夫婦で話し合いながら、お互いのタイミングに合わせてその都度役割を変えながら自己実現できる社会になるといいなと思います。

―― 近年は、男性閣僚の育休が話題になったり、女性蔑視発言をした組織のトップが辞任に追い込まれたりと、日本も今、急速に意識が変わりつつあります。

中谷 原作者の原田マハさんが、この小説を書かれたのが8年前。おそらく当時の状況への悲観と、かすかな希望を込めて、こうしたテーマについて小説を書かれていたことがすばらしいと思います。当時は完全にファンタジーだったと思いますが、今、映画として公開できるということは、それなりに機が熟してきたのでしょう。日本も少しずつでいいから変わっていくといいですよね。

中谷美紀
1993年女優デビュー。以後、数々のドラマ、映画、舞台に出演。映画『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。2021年9月23日公開の映画『総理の夫』では、日本初の女性総理・相馬凛子役を演じる。同作には夫の日和(ひより)役として田中圭さんも出演。『オーストリア滞在記』が幻冬舎文庫より発売中。インスタグラムアカウント@mikinakatanioffiziell

【中谷美紀さんインタビュー】
前編・中谷美紀 「わきまえない」態度で失敗した経験も ←今回はココ
後編・中谷美紀 年齢にとらわれず誰もが平等な社会が理想

取材・文/西尾英子
写真/伊藤 彰紀 スタイリング/岡部美穂
ヘアメイク/下田英里 ネイル/川村倫子

トップス17万9300円、パンツ41万8000円(ジョルジオ アルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン)イヤリング2万4200円(ケンゴ クマ プラス マユ/ヴァンドームヤマダ)ブレスレット(右)1万6500円(左)1万7600円(ヴァンドームブティック/ヴァンドームブティック 伊勢丹新宿店)