映画『総理の夫』(2021年9月23日公開)で、日本初の女性総理・相馬凛子役を演じる中谷美紀さん。挑戦を続ける主人公のように、中谷さん自身、40歳を前にして事務所から独立し、結婚して海外に移住するなど、大きな決断をしてきました。2本にわたるインタビューの後編では、日本と現在の居住地であるオーストリアを行き来する中谷さんの結婚生活や、人生観について聞きました。

【中谷美紀さんインタビュー】
前編・中谷美紀 「わきまえない」態度で失敗した経験も
後編・中谷美紀 年齢にとらわれず誰もが平等な社会が理想 ←今回はココ

仕事だけが人生のすべてではない

日経xwoman (以下、――) 女性には、ライフイベントなどでキャリアを中断せざるを得ないケースがまだまだあり、一度キャリアを止めてしまうと元に戻りづらい、という面もあります。

中谷美紀さん(以下、中谷) 私自身、これまでの道のりを振り返ってみると、さまざまな節目で「立ち止まらざるを得ない」場面がたくさんありました。でも私の場合、むしろ立ち止まることで、いい意味で諦めの境地に入ることができ、「仕事は大切だけど、自分のすべてではない」と思えるようになりました

 もちろん演じることは好きですし、お仕事をいただけることはありがたく思っていますが、「この仕事しかない」と執着しすぎてしまうと、楽しくなくなってしまうと思うんです。

中谷美紀さん
中谷美紀さん

―― 「仕事だけが自分のすべてではない」と思えるようになったきっかけは、何だったのでしょうか。

中谷 20代の最後にインドへひとり旅に出かけたことが、自分を見つめ直す機会になりました。インドにはヒンドゥー教徒、イスラム教徒のほか、キリスト教徒やシク教徒、仏教徒もジャイナ教徒もいる。異なる価値観を持つ人たちが、ひとつの国に共存していることにカルチャーショックを受けました。世界を見渡すとさまざまな価値観がある。人々の自由な生き方にとても刺激を受け、今、自分が持っている価値観が決して正しいわけではないと学んだことは、とても大きな収穫でしたね。

―― 日本だけで生活する日々にピリオドを打ち、2018年にはビオラ奏者のティロ・フェヒナーさんと結婚。中谷さんご自身は、オーストリアと日本を行き来する生活です。離れていても夫婦が円満であるために、決めているルールはありますか?